3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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泥沼の捕鯨

JARPAの成果たる学術文献の中にネイチャーに載ったものを発見。
http://www.icrwhale.org/03-A-a-08a.htm

Nagasaki, F. 1990. The Case for Scientific Whaling. Nature 334: 189-190.

とあるけど、正しくはNature 344。調査捕鯨の成果報告ではなく、Commentaryで調査捕鯨についての弁明です。小学生に「調査捕鯨の結果は科学誌の最高峰であるネイチャーやサイエンスに論文が掲載されたこともなければ、専門家に多く引用される論文があるわけでもなし。」と言わせたけど、訂正する必要はないと思います。

 で、これは1990年の時点で何を目的として調査捕鯨を行おうとしていたか、それをどのように対外的に説明していたかがわかる資料です。例えば南極海鯨類調査目的の一つ、年齢ごとの自然死亡率の推定は、この文献でも、2003年に発行された「クジラと日本人」(大隅清治著、岩波書店)でも言われています。90年のこの文献では予備調査の結果から"it will be easier to calculate natural mortality by age"と予想されています。また、1988年に捕獲した273頭のミンククジラについて、サンプルサイズが小さすぎて何ら明確な結論を得られないと断じ、将来の捕獲数増加を論じています。水産庁の資料からミンククジラの捕獲頭数を引用しておきます。
www.jfa.maff.go.jp/kokushi_hp/H16genkyou/H16syousai/46L.pdf
33-01Jarpa.jpg

そして20年近い調査の結果は以下のようなものだそうです。

GPの資料より
クジラは殺さなければ科学的な調査はできないか?
www.whalelove.org/raw/content/fun/1677143.pdf

1987/88年に始まった最初の「科学的」捕鯨プログラム、南極海鯨類捕獲調査(JARPA)は、自然致死率(自然死亡係数)などを解明するために18年を要し、6,788頭ものミンククジラを捕獲しました。しかし2006年に東京で開かれた調査結果を評価する科学者会合(日本人の科学者を含む)で至った結果は、「クジラの自然致死率は断定できない」という悲惨なものでした。JARPAによる自然致死率の推定データは信頼限界が広範囲に及ぶため、自然致死率が解明できないままどころか、未だに自然致死率=0という数値すら除外されていないのです。これは言い換えれば、致死的な方法を用いた18年間の「研究」で、ミンククジラは不死身だという可能性すら除外できなかったことになります。学会での報告書は「この研究目的に対して、比較的小規模の進歩が見られた」という表現にとどめています。
多額の税金と多くのクジラを犠牲にしたJARPAは、科学的価値のある調査結果が出せない大失敗に終わりました。それにもかかわらず鯨研は、調査課程の見直しもきちんと行わないまま、更に多くのクジラを捕殺する2つ目のプログラム、第?期南極海鯨類捕獲調査(JARPA ?)の開始に2005/06年度から踏み切ったのです。


GPだけではなんですのでより信頼性の高い文献も。拾い物なので全文を読んでいないのが残念ですが。
石井敦「調査捕鯨における「科学」の欠如は漁業資源交渉に悪影響を及ぼしかねない」『科学』2008年7月号

南極海調査捕鯨はその第一期(1987?2005年)が完了し、その成果を科学委員会が評価する会合(日本人研究者も多数参加)が2006年12月に東京でで開催された。南極海調査捕鯨の目的は三つに大きく分けられる、すなわち、南極海ミンククジラの自然死亡率(捕殺以外で死亡する割合; M)の推定、個体数増加率の推定、生態系における同鯨種の役割(同じくオキアミを食べるシロナガスクジラとの相互関係等)の解明である。評価会合の結論を一言で表せば、18年間の長期にわたり研究費が不足することなく、約6800頭ものミンククジラの標本が得られたにもかかわらず、いずれの目的も何一つ達成されなかった、というものである。


 (上の二つで言われている死亡率について、私は年齢別死亡率のことと解釈していますが。。)なんでこの目標が達成できなかったのか?私が気になったのはこの点です。そのへんの事情がまだよくわかりませんが、こんな文献がありました。
http://www.kaiyodai.ac.jp/Japanese/db/0010/0210/TH_40803814.html
On the estimation of age dependent natural mortality ( Sakuramoto K. and S. Tanaka ,1989)Rep. int. Whal. Commn ,39,371-373

国際捕鯨委員会科学委員会は1982年商業捕鯨の10年間禁止を決定し、鯨類資源の包括的評価を行って、上記決定を10年後に見直すとした。本研究は、日本が行った捕獲調査のデータをもとに南半球産ミンククジラの年齢別の自然死亡率を推定した場合の推定精度について、数理モデルを構築し、シミュレーション法により検討したものである。必要な捕獲頭数と推定精度の関係を計算した結果、捕獲調査による予定サンプル頭数825頭では、推定精度が極めて悪いことを明らかにした。桜本はデータ解析、シミュレーションを行った。


 千頭近く捕殺しても精度に難があるようです。(私はこれについて、1シーズンにとれるサンプル数が重要で、累積数では意味がないようだと素人解釈しています。それとも6000以上のサンプル数でも不充分なのでしょうか。(2014.7.8追記 現在では、死亡率の推定には年間千頭ほどの捕殺を数十年間続ける必要があるが、現在の捕鯨管理には死亡率データは不要、と私は理解しています。)1989年の段階で年齢別自然死亡率の高精度の算定はかなり難しいことがわかっていたわけですが、それにも関わらず目標として掲げたわけです。何か成算があったのでしょうか。数学モデルの改良で少ないサンプルでも精度を上げられるとか、充分なサンプル数を確保できるとか。そもそも誰がこれをやろうと言い出したのか。ここを見ると反捕鯨側の科学者がイジワルで無理難題をふっかけたようにも思えますが、だとしたらとんだやぶ蛇ですな。出来もしないことを延々と続ける方もなんですが。それとも調査捕鯨を永続化するのに都合のいい理屈を見つけてうれしかったんでしょうか。

 輪をかけて問題なのはこの失敗の総括が行われていないように見えることです。
http://www.icrwhale.org/03-A.htm にある
SC/57/O1 第二期南極海鯨類捕獲調査計画(JARPAII)?南極海生態系のモニタリングと鯨類資源の新たな管理目標の開発?
というpdf書類を読んでみますと第一期調査の要約として自然死亡率についてp.6にこのように記述されています。

また、クロミンククジラの自然死亡係数については、当初から予定されていた田中の方法(Tanaka, 1990)とADAPT-VPAによる解析が行われ、前者では0.05/年(Tanaka et al., 2005)、後者では0.05?0.08/年(Kitakado et al., 2005; Mori and Butterworth, 2005)と推定された。


 年齢依存的死亡率の変化については何もわからなかったわけですが、その失敗の要因とかについては論じられていません。全体的な死亡率についての記述にとどまっています。因に水産庁の資料によるクロミンククジラの解説はこのようになっています。
www.jfa.maff.go.jp/kokushi_hp/H17genkyou/H17syousai/49.pdf

本種の自然死亡係数は、かつては近縁種間の類推から0.086 (Ohsumi 1979)から0.088(Kato 1984)程度と一応の合意があったが、現在では年齢依存的に変化するものと考えられており、日本政府の許可発給の下に行われている南極海鯨類捕獲調査(JARPA)も、この年齢依存的自然死亡係数の推定を主目的の一つとしている。


 なんかあんまり変わり映えがしませんね。全体的な死亡率が激変することはないでしょうけど。JARPAIIの計画書は、前回の失敗については一切語らずひたすらバラ色というか玉虫色というかな文言を連ねる極めて官僚的なものとなっています。結局前回の調査では年齢別死亡率についてわからなかったのですが、第二期の調査計画ではこれについては何もふれられていません。商業捕鯨再開に必要なデータを集めることを名目とした調査捕鯨なのですが、必要な(?)データが得られなかったことを気にしているそぶりもありません。Natureでも一般向けの書籍でも公言していた調査目標を達成できなかったのですが、それを省みないあたりが非常に官僚的だと思います。漫☆画太郎先生の樹海少年ZOO1を思い出しますね。「1988-2006年の調査捕鯨はなかったことにして下さい」とか「調査目標の年齢別死亡率推定はなかったことにして下さい」とか。

 これを読んでもう頭の中がわけわからん状態になってしまいました。素人が手を出すもんじゃねーなー。ここはプロの意見を概観して満足しましょう。粕谷先生のお話サイエンスの記事で言われている通りなんじゃないかと。あと、水産資源学の専門家のブログを発見したのですが、ズバリ言い切ってくれています。

商業捕鯨再開への基本戦略
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/11/post_235.html

強硬路線にせよ、雪解け路線にせよ、最大の障害は調査捕鯨である。
日本が調査捕鯨利権にこだわる限り、時計の針は永久に止まったままだろう。
そもそも、商業捕鯨再開のための調査捕鯨だったはずであり、まさに本末転倒である。
日本は基本的な戦略を国際社会に対して明確にした上で、
商業捕鯨再開という大きな目的のために、調査捕鯨を中止する英断が必要だろう。


 捕鯨外交の目的はモラトリアム解除による商業捕鯨再開ではなく調査捕鯨の維持にあるという指摘は非国民通信や上の勝川さんがなさっており、また学術的には石井先生らが記述しているのですが、これと同様、大本営に調査捕鯨の目標を達成する意思が本当にあるのかも疑わしくなってくるんですが。商業捕鯨をやっているノルウェーが年齢別自然死亡率などのデータを得た上でやっているとも思えません。南極での商業捕鯨再開を阻止しようと反捕鯨派の科学者がふっかける無理難題がかえって調査捕鯨の口実になっているのでしょうか。

 もうわけわからんのですが、素人が見てわけわからん泥沼状態にすることも大本営の意図するところでしょうか。大本営にとって重要なのは調査捕鯨継続それ自体なので、調査目標を達成できるかどうかはどうでもいいんじゃないかと思えます。巻き込まれる科学者はたまったもんじゃありません。

 解決に最も良いのは日本が態度を変えることなのですが。勝川さんの言葉を借りると、

「もう公海で捕鯨なんてやんねーよ、バーカ、バーカ」


とIWCで公言することでしょう。

もし可能なら国際捕鯨取締条約第8条に、起草者の意思に沿う形で調査捕鯨捕獲枠の上限(年間10頭)を付け加えて欲しい、というのが私の個人的希望です。

第一回PEW鯨類シンポジウムでは石井先生が解決策に言及しています。

Among solutions, he cited: bringing scientific whaling under control of international law; diminishing the Japanese public's and politicians' support for scientific whaling; changing activist NGO strategies that offend the Japanese and fuel support for scientific whaling; and reconsidering a revised version of an earlier Irish proposal, which would allow coastal whaling in EEZs, promotes a global sanctuary elsewhere, revises the RMS, and abolishes scientific whaling.


このとおりなのでしょう。そうじゃないかな。
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テーマ:捕鯨・反捕鯨問題 - ジャンル:政治・経済

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