3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

Corruption

 東北大学の石井先生の分析によれば「日本にとって最も都合が良いのは、じつは調査捕鯨の続行である。」ということらしい。捕鯨産業がかつての勢いを取り戻すことが期待できない以上、現状維持はベストな選択だろう。これは、PEW鯨類シンポジウムでの水産庁森下漁業交渉官の言質によっても確認できる。

(森下氏は)包括的な管理枠組みが欠如していることが残念であるとし、解決のための3つのオプションは、1)IWCの中で持続可能な規制の下での捕鯨活動を実現するための冷静かつ理性的な議論の実施、2) 持続可能で科学に基づいた方法による捕鯨管理を行うための新組織の設置、3) 現状維持、であると説明した。


 「完全覇道マニュアル」にもあるように現状維持は政治の基本である。モラトリアムによりいままでやってきた商業捕鯨が禁止されるのなら「科学調査」の名目で捕鯨を続ければよいという、極めて政治的な判断が調査捕鯨の根幹にある。

粕谷 俊雄 IWC科学委員 兼 帝京科学大学教授(当時)
『私は80年代に水産庁に在籍し、調査捕鯨計画の立案にかかわった。その際、我々に与えられた条件は「経費をまかなえる頭数を捕鯨でき、しかも短期では終わらない調査内容の策定」だった。今では、法の網をくぐるような調査捕鯨の発足に手を貸したのは、うかつだったと悔やんでいる。』
(2005年10月3日 毎日新聞より抜粋)


 現在の調査捕鯨は学術的成果を上げていない点で科学的には不適切だが、一定量の鯨肉を確保できるという点で、政治的には適切なのだ。しかしこれは粕谷先生のおっしゃる通り、科学を腐敗させるものである。

(粕谷氏は)日本の調査捕鯨はICRWを誤用しており、科学者や政府、捕鯨産業を腐敗(corruption)させるものであるとし、日本の調査捕鯨を終了させるよう提案した。さらに、現在、日本鯨類研究所に務める科学者に対して新たな雇用先を提供し、オープンに情報にアクセスでき、研究の機会が得られるようにすることを提案した。 PEW鯨類シンポジウム より


 鯨肉横領疑惑が発覚したが、これは捕鯨産業の腐敗の一つかもしれない。鯨類研究所は財団法人であり、実態としては国営捕鯨会社である。マックスプランク、カロリンスカ、パスツール、コールドスプリングハーバー、あるいは理研といった研究所は独立性の高い研究ユニットの集合体であり、各チームリーダーには研究テーマ設定に関してかなりの自由がある。それに比べ、鯨類シンポジウムではこのような指摘がなされている。

日本の科学者には自分の仕事にほとんど裁量がないと指摘する声があがった。


 殺したクジラを使って何か科学っぽいことをやれと言われているのかもしれないが、鯨類研究所のウェブサイトを見ても、何人くらいの科学者がいて、誰がどんな研究をやっているのかは不明である。「調査捕鯨」でろくな学術的成果を挙げられないばかりか、疑似科学的主張まで行う鯨類研究所とはなんなのか。ただ一人の科学者ならおろかな間違いを犯すこともあるかもしれないが、仮にも専門家集団が、鯨類と人類の魚介消費を棒グラフで比べただけで競合を論じるなどという愚をおかすとは考えにくい。(クジラが人類の3-6倍の魚介を消費しているのが驚きだと言うなら問おう。ではどのくらいの量ならクジラ共の適切な消費量なのか?昔はどのくらいのサカナをクジラが食っていたのか?)

 (私の師の受け売りだが)友好的相互批判こそ科学発展の要。科学的批判こそ仮説の発展に必要なのだ。それが国立捕鯨会社の中で許される空気があるのか。明らかな疑似科学を誰も止めることができないのは何故か。もはや鯨類研究所の中の人を攻撃しても仕方あるまい。

 実のところ、海棲哺乳類研究にしても捕鯨産業にしても小さな分野である。韓国で起きた幹細胞研究に関する捏造事件に全く影響を受けていない韓国人科学者が多くいるように、仮に日本の鯨類研究が疑似科学で大打撃を受けても私には影響しないだろう。クジラが食えなくなっても実のところ日本人の生活には大して影響しないのと同様だ。だからこれはごく小規模な現在進行形のルイセンコ論争のようにも見える(捕鯨会社の内部では学説の科学的な適切さよりも、捕鯨続行に都合が良いかどうかで正否が決められているのではないか)。あるいは進化論争か(生物の進化は明晰な理性にとって避けがたい結論だが、宗教的信仰を否定するかどうかは微妙なところであり、進化論の中にもトンデモはある。捕鯨批判は必ずしも鯨食文化を否定するものではないが、反捕鯨派の中には変なのが多い)。クジラを食いたいとそれほど思わない私には関係ないことかもしれない。しかし、鯨類研究コミュニティーという小さな村の中で、最大派閥である国営捕鯨会社のあやまちを正そうと奮闘する粕谷先生をみていると、科学者の端くれとして、他人事としてはならないと思うのだ。
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