3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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…それはありえない

 先鋒の金持ち小学生に引き続き、鯨類研究所のパンフレット「クジラの調査はなぜやるの?」の検証です。
http://www.icrwhale.org/04-B-l.htm

 まずは阪大の菊池先生による練習問題です。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1126449378
correlation2.jpg

 かいつまんでいえば、テレビの普及率と平均寿命の伸びに相関が見いだされるが、これは因果関係ではないのでテレビが健康に良いということにはならない、ということです。それでは実戦問題。
18-02.jpg

 クジラの頭数回復と漁獲の減少には相関があります。しかもクジラがある程度魚を食べるのは本当なので、この場合はゼロイチではなく因果と相関のどっちの割合が大きいのかが問題です。(それにしてもクジラの胃の中身を見せつけて漁業への影響を強調する手法、血に染まった海の写真を見せつけて「捕鯨の残酷さ」を煽る反捕鯨団体といったいどこが違うというのか?)
18-03.jpg


 この場合まず検証しなければならないのは、

○ 海獣は比較的大型で呼吸のために浮上して来るので目立ちやすく、このため漁業関係者からは害獣という印象をもたれやすい
○ クジラは人間が利用しない空間のサカナを主に食べている可能性がある

参考文献
Must top predators be culled for the sake of fisheries?
Yodzis, Trends in Ecology and Evolution 16: 78-84 (2001) などより

あたりですか。パンフレットだけではこの辺はよくわからないので他の文献を探してみましょう。

Whales cleared of competing with fishermen
Global study declares suggested culls are unnecessary.
Amanda Leigh Haag
Published online 20 July 2004 | Nature | doi:10.1038/news040719-7

 ネイチャーのニュースがひっかかってきました。Daniel PaulyとKristin Kaschnerの研究によれば、海洋を18万の小区画に区切って漁業と海獣の分布の重複を調べたところ、海獣の消費する食料の1%未満が漁業海域と重なるエリアからによる、となったそうです。

“You can't use the argument that whales compete with fisheries. They simply don't eat the same food in the same areas” - Kristin Kaschner


 海洋全体でいうならこの結論は妥当でしょう。そもそも昔はクジラがもっといたわけですし。海域を絞ってみた場合、日本側はこのデータが日本とアイスランド周辺で海獣の分布と漁業が重なることを示していると主張していますが、PaulyとKaschnerは海獣が漁業に影響している可能性のあるホットスポットとして "the Benguela system off the coast of southwest Africa, where increasing populations of South African fur seals may affect hake stocks."などと言っているだけです。アシカやイルカが局地的に問題になる(イルカは本当に害獣なんでしょうか?)ことはあっても、クジラがグローバルに問題になるとは考えられていません。魚や海獣の回遊がどの程度考慮されてるのかはわかりませんが、日本周辺が競合領域であると考えてるのは今のところ鯨類研究所くらいでしょう。ニュースで紹介されたデータを含む論文はこれらです。

Modelling and Mapping Resource Overlap between Marine Mammals and Fisheries on a Global Scale
KASCHNER, Thesis (2004)

Mapping world-wide distributions of marine mammal species using a relative environmental suitability (RES) model
Kaschner et al., MARINE ECOLOGY PROGRESS SERIES 316: 285–310 (2006)

 論文中の図を見ると確かに、日本周辺は鯨類研究所の主張通りイワシクジラ、ニタリクジラ、ミンククジラとの競合領域のようにみえます。ただ、論文のデータは他のクジラやイルカも結構日本周辺にいることを示しています。特にどのクジラが何漁に脅威なのかという具体的な話は聞いたことがありません。そもそも近海にクジラが豊富だからこそ捕鯨を含むクジラ文化が日本で育まれたわけです。なぜ最近になって個体群が回復傾向にあるだけのクジラたちが漁獲減少の原因として目の敵にされているのか。仮に競合領域であった場合でもさらに

○ クジラは、商業利用されるサカナだけでなく、それらの捕食動物も食べている可能性がある。この場合、クジラは間接的に漁業をアシストしている面もあることになるので、クジラを間引いた結果、短期的に漁獲が増えても長期的には漁獲が減る可能性がある

といったことを吟味する必要があるわけです。付け焼き刃の資料収集ですが、クジラが漁業への脅威であることを示す有力なデータの存在については聞いたことがありません。専門家の多数は日本周辺のクジラの頭数の回復が漁獲を減らした主原因とは考えていない、ということでしょう。ついでにこれも比べておきますか。前回スネちゃまがこてんぱんにやっつけたのですが、毎度おなじみのクジラは人間の3~5倍の魚を食べているという話です。
18-05.jpg

もう一つの図は
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Modeling and mapping trophic overlap between marine mammals and commercial fisheries in the North Atlantic
Kaschner et al., In: Fisheries impacts on North Atlantic ecosystems: catch, effort, and national/regional data sets 9: 35-45 (2001)

より。これは北大西洋に絞って漁獲と海獣による消費を比べたものです。北大西洋では1950年代にはクジラによる食害はずいぶんひどかったが90年代には軽減された、という話があればいいんでしょうけどね。。(著者らはこの図では漁業との競合がどうなっているのかはわからないとして、Fig.2以降で発展的な解析を行っている)

次。
「南極海にミンククジラは76万頭」
この数字は現在採用されていないようだ、とだけコメントしておきます。

次。
「シロナガスクジラの回復をミンククジラが妨げているって本当?」
これにはもう少し詳しい解説が外部にあります。

南極海のシロナガスクジラ資源はなぜ回復しないのか
http://luna.pos.to/whale/jpn_oh_blue.html
http://www.whaling.jp/isana/isana10.html

 シロナガスクジラが減った分ミンククジラが増えた、だからミンククジラを減らせばシロナガスクジラが回復する、という理屈です。確かに筋は通っていますが、他の可能性も考えられます。例えば、

○ ミンククジラを減らした場合、ミンククジラより繁殖力に優れる第三の動物が増える可能性 
○ そもそもシロナガスクジラ個体群が回復不能なまでにダメージを受けている可能性 など。

 どうしてこういった他の可能性を排除できる/低く見積もれるのか、これだけではよくわかりません。この話には続きがあるようです。

南極海で鯨類の調査をする必要性と新捕鯨構想
http://www.e-kujira.or.jp/geiron/ohsumi/1/#c1

どのぐらいのミンククジラを間引くと効果がありますか?
また,シロナガスクジラが回復すべき適正水準とはどのぐらいでしょうか?


魚拓

質問に対する具体的な答えはありません。。。例えば

Demography of the endangered North Atlantic right whale
Fujiwara & Caswell, Nature 414: 537-541 (2001)

では数学モデル分析の結果として、(実現可能かどうかは別としても)雌の死を年間2頭防げれば個体増加率上昇が期待できると予測しています。それに引き換え、この10年以上の間、一体何をやってきたのか?何の発展がこの「学説」にあったのか?シミュレーションすらやられていないのか。そもそもこの「学説」はパンフレットにあるとおり「広く受け入れられて」いるのか?

Observations of blue whales feeding in Antarctic waters
Corkeron et al., Polar Biology 22: 213-215 (1999)

はクジラの摂餌行動観察でこの説を検証できる可能性があると論じています。他のよく引用されている文献では

Baleen whales: conservation issues and the status of the most endangered populations
Clapham et al., Mammal Review 29: 37-62 (1999)

The contention that Blue Whale recovery in the Antarctic is being inhibited by prey competition from Minke Whales (e.g. IWC, 1994; p. 102) has little basis in existing data (Clapham & Brownell, 1996).


根拠薄弱とかなり疑問視されています。米国海洋大気圏局によるシロナガスクジラ回復プランの中には鯨類研究所のレポートがいくつか引用されていますが、ミンククジラを間引くという話は出てきません。

また、ご隠居(Holt博士は既に引退の身である)も

Whaling: Will the Phoenix rise again?
Holt, Marine Pollution Bulletin 54: 1081–1086 (2007)

This justification is based on spurious assertions that numerous and hungry whales threaten the world’s fisheries, and that the abundance and possible increase in some whale species is impeding the recovery of other, severely depleted, and potentially more valuable species such as the blue whale.


てな具合にばっさりです(spurious: 事実に基づいておらず誤っている、根拠がなく不確かな、正しく思えるが誤りである)。ミンククジラがシロナガスクジラを迫害しているという説は広く知られてはいるようですが、それを支持するデータがあって広く受け入れられているようにはみえません。

あとついでに、調査費用についてですが、パンフレットには


      致死性調査  非致死性調査
調査経費   小額で済む  多額の費用が必要


とあります。他のサイトでも同様の主張がされています。

http://luna.pos.to/whale/jpn_sci_oh.html
http://www.whaling.jp/qa.html#05_01

 クジラ肉を売って費用回収できるから調査経費が少額で済むという話は少し疑問ですね。そもそも費用回収という発想は自然科学系にはあまりないものです。獲得した予算で質の高い研究論文を出すことのほうが重視されるでしょう。さて、

A DNA-based method for identification of krill species and its application to analysing the diet of marine vertebrate predators
Jarman et al., Molecular Ecology 11: 2679-2690 (2002) 

では糞サンプルのPCR分析という非致死性調査法でピグミーシロナガスクジラなどの食べているオキアミ種の同定が行われていますが、考察の部分で致死性調査は高額で、時間がかかり、倫理的に許容されにくいと論じられています。

Lethal sampling, which is used for studying whale diet (Kato & Ichii 1991), is very expensive, time consuming and in many cases is becoming increasingly unacceptable for conservation or ethical reasons (Aron et al. 2000). It is not possible to identify morphologically the krill species in the faeces of penguins or whales, so our method provides a new noninvasive tool for identifying trophic links between vertebrates and krill. We have also successfully applied this method to identifying the krill components of fin whale (Balaenoptera physalus) and whale shark (Rhincodon typus) diet from their faeces. To build on our initial success with krill species detection, we are developing DNA-based methods to identify other animal groups such as squid and fish from DNA in the scats of marine predators. The results of this study and the small number of other similar studies (Hofreiter et al. 2001; Symondson 2002) suggest great potential for DNA-based species detection as a method for dietary analysis.


 その通り。だいたい捕鯨船一隻作るのにいくらかかるのか?解体作業の人員は?元手がなければ捕殺は出来ないし、高額の初期投資をしたら研究調査よりなによりまず第一に捕鯨ありきになるおそれがあります。

グリーンピースの資料の中に粕谷先生の証言がありました。

粕谷 俊雄 IWC科学委員 兼 帝京科学大学教授(当時)
『私は80年代に水産庁に在籍し、調査捕鯨計画の立案にかかわった。その際、我々に与えられた条件は「経費をまかなえる頭数を捕鯨でき、しかも短期では終わらない調査内容の策定」だった。今では、法の網をくぐるような調査捕鯨の発足に手を貸したのは、うかつだったと悔やんでいる。』
(2005年10月3日 毎日新聞より抜粋)


 肝心のJARPN, JARPNII, JARPAといった捕獲調査の内容についてですが、なぜ大規模な捕殺が必要なのかパンフレットを見てもよくわかりません。そもそも専門家の合意が得られていないのだから私が理解できないのも当たり前でしょう。この辺で今回の検証は終わりにしときます。しかしこのままでは鯨類研究所の中で反乱が起きるのではないかとすら思えてきます。

「必要のない捕殺データで論文を書くことを強制され、アクセプトされずに精神的苦痛を受けた」
「非致死性調査法の改良を研究したかったのにやらせてもらえなかった」
「トンチキな『学説』を支えるための屁理屈を書かされて精神的苦痛を受けた」

 ありえないかね?
PEW鯨類シンポジウム
より

現在の民営化の流れの中で、なぜ日本の捕鯨産業だけが今も国によって管理されているのかと疑問を提起し、捕鯨予算の7割がプロパガンダに使われ、環境省が意志決定の場から排除されており、日本の科学者には自分の仕事にほとんど裁量がないと指摘する声があがった。


 船場吉兆のニュースでこんなのがあったけど。『常態化していた食べ残しの使い回しに対し、「恥ずべきこと」という認識は調理場全体で共通していた。だが、改めることはできなかった。』
-=-=-=-=-=-=-=-
 いろいろ議論される日本の捕鯨が科学的側面から見ておかしいことを指摘しました。これ以外にも、政治・外交的側面からの分析や歴史・文化・社会的側面からの分析があり、いずれも通俗的な捕鯨像と現実との乖離を示しています。捕鯨に対して賛成/反対という分類はよく使われますが(ネイチャーの記事でもpro-whaling/anti-whalingという言葉が使われている)、捕鯨賛成派が「クジラの乱獲を望んでいない(これが嘘でないのはわかるが、捕鯨の実態やRMSについて熟慮していないのであれば浅はかな発言である)」のと同様、捕鯨反対派の多くには抑制的捕鯨容認の傾向が見られます。賛否といったゼロイチではなく、そこにはグラデーションが存在します。ついでにいうと、日本のクジラ文化をちょっと勉強したならシーシェパードのような感覚も(賛同しないまでも)理解は出来るようになります。成立の背景は違えども、クジラを殺すことを禁忌とする価値観は日本にもあったのです。聞いたところによると在日米軍への思いやり予算が年間2000億円とか。その1%でもクジラの研究予算にまわせばいいのに、と多くの研究者は思っていることでしょう。

日本に好都合なのは調査捕鯨の継続「捕鯨外交のまやかし」が指摘する不毛な論争の背景
http://www.news.janjan.jp/living/0802/0802120675/1.php
伝統と文化の緻密な再検証『捕鯨問題の歴史社会学』を読んで
http://www.news.janjan.jp/culture/0801/0801260643/1.php
追記
 あまりにも電波が高出力すぎてサイエンスレーダーで感知できなかった記述を発見したので追加。
「クジラは旬のサカナを食べている」
18-07.jpg

。。どうリアクションしていいのかわかんねーよ!その時期に豊富なものを食べるのは自然の摂理じゃないのかYO!旬でないものを食べてる方がよっぽど驚きダロガ。

 大体さ、「捕鯨の残忍さ」とか「体内で爆発する2、3本の槍が腹部に刺さったままロンドンの街で血を流しながら肉屋のトラックを牽引させられている馬を想像してみてください。現在の鯨の殺され方がどのようなものかお分かりになるでしょう。もし鯨のうめき声が捕鯨船の砲手に聞こえたなら、恐らくそれ以上耐えられなくなり、捕鯨産業は直ちに停止するでしょう。」とかめちゃめちゃ感情的なことを煽る動物保護団体のパンフレットにすら鯨食害論に疑問を投げかける根拠となる学術文献が多く引用されているんだからさ、こんな下らないことにスペース割くんだったら学術文献でも挙げてみなよ。マジでおすすめ。
http://www.ifaw.org/ifaw/general/default.aspx?oid=99319
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テーマ:捕鯨・反捕鯨問題 - ジャンル:政治・経済

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