3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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サケを追う:reprise

 以前に米国ノルウェーのサケ養殖の問題点について言及したのですが、今度はチリ産養殖サケがネットで話題になりました。
参考記事
http://lastline.hatenablog.com/entry/2016/05/30/174858

 まず食品としての安全性を論じたものから見ていきましょう。特に話題になったのは2004年にサイエンスに発表されたHitesらによるもので、養殖サケに蓄積した汚染物質の危険性を論じています。これについては後に誌上で議論されており、養殖サケを多く食べているノルウェーで特に健康問題が起きていないことや、魚食を減らすデメリットと魚を食べることのベネフィットなどが論じられています(Science 305: 475 (2004))。
Global assessment of organic contaminants in farmed salmon
Hites et al., Science 303: 226 (2004)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14716013

魚食の健康への影響をレビューしたのはMozaffarian & Rimm (2006)で、当時の証拠からは、養殖サケは野生のものよりややリスクが高いながらも全体としてリスクを上回るベネフィットがあるとしています。
Fish Intake, Contaminants, and Human Health: evaluating the risks and the benefits.
Mozaffarian & Rimm, JAMA 296: 1885 (2006)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17047219

比較的最近でも、養殖サケの汚染と健康問題を論じたものはあります。
The role of persistent organic pollutants in the worldwide epidemic of type 2 diabetes mellitus and the possible connection to Farmed Atlantic Salmon (Salmo salar)
Crinnion, Altern Med Rev 16: 301 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22214250

 PCBなどによる汚染の影響は調査されていますが、残留抗生物質についてはまだよくわかっていないようです。食品としての安全性を論じた場合、リスクとベネフィットのバランスの話になるのは当然で、養殖サケ全般が食用に適していないことを示す科学的理由なんてものを見つけるのは非常に困難でしょう。

 ところが食品としての安全性ではなく、野生のサケなど自然環境への影響に注目した場合、養殖は深刻な問題を引き起こしていることがわかります。問題は大まかに以下の4つに分類できます(Bailey 2014による)。
1)養殖サケにつく寄生虫や病気の問題
2)POPsや抗生物質、餌や糞を通して水中に放出される栄養分などの問題
3)病気や寄生虫の伝播や、交配による遺伝子汚染など、養魚場近傍の野生のサケへの影響
4)養殖魚や餌の移動にからむより広範囲な生態的影響(チリではアトランティックサーモンは外来種)

養殖サケが野生のサケの生存を脅かすことや、行政と司法の問題など。
Hatcheries and Endangered Salmon
Myers et al., Science 303:1980 (2004)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15044790

養殖サケを自然界に放たないことが緊急の課題である。
Genetic and ecological effects of salmon farming on wild salmon: modelling from experimental results
Hindar et al., ICES Journal of Marine Science 63: 1234 (2006)
http://icesjms.oxfordjournals.org/content/63/7/1234.abstract

養殖サケを逃がさないことの重要性はここでも論じられています。
Incidence and impacts of escaped farmed Atlantic salmon Salmo salar in nature
Thorstad et al., (2008)
http://www.fao.org/docrep/016/aj272e/aj272e00.htm

サケ養殖を持続可能なものにするために何が必要かが論じられるということは、現状は持続可能なものではないということです。
Looking for sustainable solutions in salmon aquaculture
Bailey, Etikk i praksis. Nordic Journal of Applied Ethics 8: 22 (2014)
http://www.ntnu.no/ojs/index.php/etikk_i_praksis/article/view/1801/1830

・チリのサケ養殖は環境にどう影響しているのか?

抗生物質の環境への漏出など、サケ養殖が海洋保護と相容れないことを指摘。
Marine conservation in Chile: Historical perspective, lessons, and challenges
Fernandez & Castilla, Conservation Biology 19: 1752 (2005)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1523-1739.2005.00277.x/full

底性生物多様性への影響、赤潮の発生、固有生物への影響などを指摘し、影響調査の必要性を説く。
A review of the impacts of salmonid farming on marine coastal ecosystems in the southeast Pacific
Buschmann et al., ICES Journal of Marine Science 63: 1338e1345 (2006)
http://icesjms.oxfordjournals.org/content/63/7/1338.full

養殖産業に対して科学に基づく有効な規制がないことを指摘。不透明性のため、薬剤の使用についても実態は不明である。
Salmon aquaculture and coastal ecosystem health in Chile: Analysis of regulations, environmental impacts and bioremediation systems
Buschmann et al., Ocean & Coastal Management 52: 243 (2009)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0964569109000350

The agency’s immediate goal should be to fund research required to develop a transparent, ecosystem-based regulatory framework that promotes IMTA. Monitoring programs and licensing procedures must consider the impacts of individual sites and the cumulative impacts from multiple sites across a wide range of spatial scales. Before such changes are realized, environmental threats and human health risks will remain unacceptably high and salmon farming in Chile will not meet any reasonable definition of sustainability.



逃げ出した養殖サケ類の増加と、サケの捕食などによる在来魚の減少を報告。
Aquaculture, non-native salmonid invasions and associated declines of native fishes in Northern Patagonian lakes
Arismendi et al., Freshwater Biology 54: 1135 (2009)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2427.2008.02157.x/abstract

多数の養殖魚が毎年自然界に逃げ出しており、生態系への影響が懸念されている。養殖業者と漁師の対立など社会問題も。
Escaped farmed salmon and trout in Chile: Incidence, impacts, and the need for an ecosystem view
Sepúlveda et al., Aquacult Environ Interact 4: 273 (2013)
http://www.int-res.com/articles/aei2013/4/q004p273.pdf

 養殖サケの食品としての安全性についてはなかなか結論できない一方で、養殖の環境への悪影響は厳然と存在します。食い物としての安全性だけが大騒ぎされることで、より明白で緊急に対応するべき重要な問題が見えにくくなってしまいます。こうしたことは遺伝子組み換え作物についても同じかもしれません。メディア上の議論で焦点になるのは食物としての安全性ばかりで、環境や社会的影響が議論されることはあまりありません。しかし遺伝子組み換え作物問題の本質は、サケ養殖と同様に、それが社会の中でどのように運用されるか(たとえば農民漁民の生活、食糧生産体制、人間以外の生物への影響など)にあるのではないかと思います。

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おまけ

ニセ科学批判=無能の法則
ホメオパシーとかEM菌とか江戸しぐさとか水素水ごときにいちいち大騒ぎする連中はこういう科学と社会の関わる問題で必ずまともな答えを出さないという法則。捕鯨沈黙の春とマラリアチョウの放射線被曝研究などでみられる。というかsalmoを名乗って外来種云々しておきながらサケ養殖の話題で野生種保護の話をしないってどういうことだ。

https://twitter.com/hidetoga/status/737113190077587456
https://twitter.com/usg_ringo/status/737074969125912576
https://twitter.com/yu_kubo/status/737042680123777025
https://twitter.com/doramao/status/737061462057701376
https://twitter.com/invasivespeacie/status/737222703111757825
https://twitter.com/sakamotoh/status/736826059199414272
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