3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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繰り返される主題と変奏

「沈黙の海」 イサベラ・ロヴィーン著 新評論刊 (公式ブログ http://tysthav.exblog.jp)

 スウェーデンを中心としたヨーロッパの漁業についての本ですが、以前ふと書いた疑問(漁業資源管理分野で大企業の介在なしにサウンドサイエンスイデオロギーがあらわれるのは日本だけなのか?)についての答えが書いてありました。この本から受ける印象では、どうも漁業分野は洋の東西を問わず大企業の介在しないサウンドサイエンスイデオロギーがあらわれる傾向があるようです。

http://chikyu-no-cocolo.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-1609.html

 上の勝川先生の話を読むと、ノルウェーの漁業は比較的うまくいっているように思えます。だから隣国スウェーデンもそれなりにうまくやっているのだろうと勝手に想像していたのですが、スウェーデン漁業衝撃の実態は本書によると以下のようなものです。

・魚が少なくなっているのに、漁師には政府から多額の助成金が与えられ、漁船の高性能化が行われている。また軽油の漁業優遇税制があり、より長時間の操業が可能になっている。つまり少なくなっている魚を競って獲るようになっているので、魚はより少なくなっている。

・スウェーデンの漁業行政は環境省ではなく農林水産省と水産庁の管理下にあり、水産業は自然や生態系の制約を受けずに成長することが前提とされている。

・価格保証制度により魚の買い取り最低価格が決められているため、捨てるために魚を捕り続ける状態になっている。

 なんか日本の状況とよく似ているのではないでしょうか。

 スウェーデンでは、漁師ー水産庁ー政治家が「鉄のトライアングル」を形成し、政治家は漁業関係利益団体の言いなりで、消費者、釣り愛好家、環境保護団体の声や、資源減少を訴える専門家の意見が無視されてきたことも書かれています。漁師に好き放題やらせるのが政治家として支持を取り付ける手っ取り早い手法ということでしょう。

海洋漁業試験場の職員は、自分たちの調査結果が自らの雇い主である水産庁にさえも真面目に受け止めてもらえないことに半ば慣れているようだ。


 水産庁の長官だった研究者はこう回顧しています。「水産庁の長官だった当時は、自分の雇い主である政府に忠実でなければならなかったんだ。だから、そうしようと努力していた」。このようにして資源減少を憂う研究結果は政治家の手により楽観的な予測に書き換えられていったわけです。ロヴィーンはスウェーデンの漁業をこう総括しています。「漁業という「文化」の維持ばかりが重視される一方で、絶滅の心配がない安心して食べられる魚を食卓に送り届けてもらうという消費者の権利がないがしろにされる形でこのお金(税金)が使われてきたからだ。」

 さらに興味深いのがアフリカ諸国の漁業資源がヨーロッパの船団に荒らされている様を描いた第7章と、EUの漁業委員会の会議をレポートした第8章です。高度に機械化した先進国の船団により、アフリカ諸国の漁業資源と漁師の生活が脅かされるのと関連し、陸上野生動物の密猟が盛んになっていくことが指摘されています。

つまり、漁業政策におけるEUの振る舞いは責任ある行動とは言えないし、長期的な持続可能性を欠くために他国のお手本になるようなものではない。むしろ、お金と官僚主義と汚職が大きなスケールで結びつくとどのような悲劇が起こるのかをもっとも端的に表したよい例と言える。そして、この帰結として、弱い者が搾取され、すでに裕福な者にお金が流れている。そして、何よりも重要なのは生態系の破壊が行なわれているということだ。


 アフリカの漁業資源を荒らしているのはとくにスペインの船団ですが、EUの漁業委員会で、不確実性を根拠に漁獲量削減に反対する(出た!サウンドサイエンスイデオロギー!)スペインの議員に注目し、ジャーナリストである作者はその素性を調べています。そしてこの議員が、フランコ政権時の政治家の娘であることを明らかにします。スペインの漁業が拡大したのは、「スペインを世界でもっとも強大な海洋国に再びのしあげる」べく、フランコがてこ入れしたことも指摘されています。無敵艦隊よ再び、というところでしょうか。自然からの収奪を基本とする現代の漁業はどうやら帝国主義的性質を帯びやすいもののようです。この点、日本の捕鯨賛成論が強烈なレイシズムに裏打ちされているのも自然な流れなのでしょう。

 そして、漁業が比較的うまくいっているとされるノルウェーにも問題があることが本書で指摘されています。以前に米国のサケの話を書きましたが、問題は似たようなもので、ノルウェーでも養殖魚につくサケジラミや病気が野生のサケを脅かしていることや、養殖は野生魚の保護どころか脅威となることが述べられています。

 最後に解決策を提示して本書は終わっていますが、作者のすごい所はジャーナリストとして問題を告発するだけにとどまらず、政治家として漁業を改善すべく活動をはじめた点にあります。ロヴィーンはこう問いかけます。
「漁師と研究者の主張をぶつけて妥協点を見いだそうなんて考え方は、この問題の捉え方を根本的にまちがえている。」
「私たちが投げかけるべき本当の問題は、変革を起こすためにはまず意識の改革からという考え方が本当に正しいのかどうかということだ。実際は、逆なのではないだろうか。つまり、変革が意識の改革をもたらすのではないのだろうか。」

 また最後に、直接的な解決策として以下の7つが上げられています。
1 早急な海洋自然保護区の指定
2 底曵きトロール漁の試験的禁止
3 魚の海洋投棄の禁止
4 漁業の環境アセスメントの実施
5 密猟取締の強化
6 詳細な漁獲海域表示制度の導入
7 漁業に対する見方の改革 生態系に配慮して漁獲された魚を食べる権利がある

 気候変動については、大企業が後押しするサウンドサイエンスイデオロギーが適切な対策を手遅れにしたことが指摘されています(http://www.diamond.co.jp/book/9784478064818.html)。大企業がシンクタンクを隠れ蓑にタバコや化学物質の規制をのがれようとするのがサウンドサイエンスイデオロギーの主旋律ですが、漁業では大資本なしでも不確実性をタテに規制をのがれようとする少し変わったサウンドサイエンスイデオロギーがあらわれます。この「わかっちゃいるけどやめられない」状態はどこにもあらわれるもので、科学性のない調査捕鯨が続けられたり、地震の巣の上で原発を再稼働させたりしているわけです。
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