3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

スネちゃま捕鯨を語る

Q1

 調査捕鯨の科学的評価ってどうなってるの? 
\____  _______________/
     \ /
      __, - 、
.    /, ─── 、)
   //  /    ヽi
   |_|    ┃ ┃ |
   (     ⊂⊃ ヽ         
   >、   \__ノ ノ  .nm━・~~~   
  /  \─── ´ヽ、 /)- |    
 /    \--/ |  ̄|_丿      
 |      /   |  ||       
 !    /     ノ   |       
 `iヽ__ノ━━━━ヽ、__ノ       
  ヽ、     |^ヽ、__ノ  

    ____
    \    ───___
    <             ̄ ̄ ̄ ̄.|
    > _________     |
     ̄ ̄ |  \  /     |    |   
        | /⌒ヽ  /⌒ヽ  .|   .|   
        | | ● |  i ●  |  |   |    
        | ヽ.__ノ  ヽ._ ノ   .レ⌒ヽ    
       ノ   o          6 .|     
      /_______ノ   _ノ    
      \             ノ      
        ヽ 、___   .イ        
              |───┤          
            / |/ \ / \
 __________________/\_____________________
/                          \
 調査捕鯨をやっているのは財団法人の鯨類研究所だね。調査捕鯨の結果は科学誌の最高峰であるネイチャーやサイエンスに論文が掲載されたこともなければ、専門家に多く引用される論文があるわけでもなし。ウェブサイトのQ&Aなんかでは「科学者に高い評価を受けている」と言ってるけど、実際には鯨類学者のほとんどは調査捕鯨の結果を高く評価はしていないよ。たとえばね、

Modelling the past and future of whales and whlaing
Baker & Clapham, Trends in Ecology and Evolution 19: 365-371 (2004)

は将来の商業捕鯨再開の可能性に言及しつつ主にクジラの現状をレビューした論文なんだ。ところがこの中で、鯨類研究所の調査捕鯨の成果はまったく引用されてない。言及する価値なしと見なされてるんじゃないかな。とどめはNature 435: 883-884 (2005)に鯨類研究所以外の日本人研究者(粕谷俊雄氏、後述)を含む4人の専門家による調査捕鯨批判が掲載されたんだ。その中でも調査捕鯨の学術的成果の乏しさが指摘されているよ。鯨類研究所はこれに反論をしたんだけど、第三者的な科学者で鯨類研究所の弁護にまわった人はいないみたいだね。現在トップジャーナルに掲載されるクジラの研究論文ではクジラを殺したりなんかしていないよ。こういったことから見ても科学研究のためにクジラを殺す必要があると考えている専門家は相当少数派だろうね。まとめると、調査捕鯨の科学的成果は控えめに言ってもあいまい、もっとはっきり言えば科学の僭称ということだね。

Q2
   _,,,......,,,
  ,,,''"    ゙''''丶
  i;;:::::ハ,:::::ハ、::::ハ ノ
 !:::::ノ-lノ ノ'"- l/   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 r、|  イ゚j`  'l゚j`l  < ずいぶん異常な評価を受けているのね。
 、_:  `  ' ` ノ  │ ところでスネ夫さん、ふえすぎた鯨が
  >、 丶フ /i:\ │魚を食べ尽くすというのは本当かしら?
  l /`i -'イ   W  \_______________
  W /\/ /⌒ヽ
   /l./\/    ヽ
   l          \

    ____
    \    ───___
    <             ̄ ̄ ̄ ̄.|
    > _________     |
     ̄ ̄ |  \  /     |    |   
        | /⌒ヽ  /⌒ヽ  .|   .|   
        | | > |  i ●  |  |   |   
        | ヽ.__ノ  ヽ._ ノ   .レ⌒ヽ   
       ノ   o          6 .|   
      /_______ノ   _ノ     
      \             ノ      
        ヽ 、___   .イ       
              |───┤          
            / |/ \ / \

 __________________/\_____________________
/                          \
 海域をものすごく限定すればイルカがイカ漁の邪魔になったりするという話はあるね(追記:こちらもご覧下さい)。けど地球全体の海について「鯨を間引くことでその分人間が魚を利用できることは間違いありません」なんて言ってるんだからとんだニセ科学だよ。マトモな生態学者はそんな単純な断定はしないさ。たとえばね、

Must top predators be culled for the sake of fisheries?
Yodzis, Trends in Ecology and Evolution 16: 78-84 (2001)

はまさに海洋生態系での害獣駆除が漁業にとってプラスになるかどうかを論じたものなんだけど、その中でどう言われているかというと、

○ クジラは人間が利用しない空間のサカナを主に食べている可能性がある
○ もしクジラがサカナ泥棒だというなら、クジラから見れば人間がサカナ泥棒であり、高度に機械化された漁業がクジラの生存を脅かす可能性がある
○ クジラは、商業利用されるサカナだけでなく、それらの捕食動物も食べている可能性がある。この場合、クジラは間接的に漁業をアシストしている面もあることになるので、クジラを間引いた結果、短期的に漁獲が増えても長期的には漁獲が減る可能性がある

とまぁ、こんな感じなんだ。勿論、間引くことに意味がないとも断定していないけど、それが科学者としての誠実な態度なんだよ。あとついでにね、

Rapid worldwide depletion of predatory fish communities
Myers & Worm, Nature 423: 280-283 (2003)



Impacts of biodiversity loss on ocean ecosystem services
Worm et al., Science 314: 787-790 (2006)

は世界的な漁業不振についての論文だけど、クジラが増えたからサカナが減っている可能性なんてこれっぱかしも言われてないよ。第一、サカナを一番食ってるのはサカナなんだ。クジラが増えてサカナが減るなんて、相手にするのもバカバカしい話だね。
10-1


Q3

クジラが人類を救う貴重な食糧になるって聞いたんだけど、
世界の飢餓をクジラはすくえるのかな?
\_________  _______________/
          \ /

      , ──── 、
    ゝ/ _______ヽ
     i  | / /⌒ ヽ/⌒ヽ
     | _| _|   ・|・  |
  , ─i 、    ヽ __ o__ ノ  ヽ   
  !  `-、          |   )   
  \   ヽ、   ──┘ ノ /    
    \   \二二へ二ヽ/    
     \ |        |
       |        |


    ____
    \    ───___
    <             ̄ ̄ ̄ ̄.|
    > _________     |
     ̄ ̄ |  \  /     |    |   
        | /⌒ヽ  /⌒ヽ  .|   .|   
        | | ● |  i ●  |  |   |    
        | ヽ.__ノ  ヽ._ ノ   .レ⌒ヽ    
       ノ   o          6 .|     
      /_______ノ   _ノ    
      \             ノ      
        ヽ 、___   .イ        
              |───┤          
            / |/ \ / \
 __________________/\_____________________
/                          \
 最盛期の南極捕鯨では年に16000BWUのクジラがとられていたんだ。これを全部食肉に利用しても150万トン未満だね。今の日本の年間牛肉供給量をちょっと上回るくらいだよ。この乱獲の結果、南極のクジラは激減したんだから、実際に持続的に利用できるクジラ肉はもっと少ないことになるね。鯨類研究所の発表では現在南半球にミンククジラは70万頭以上いて年間2000頭は利用できるそうだけど(鯨類研究所のこの数字に疑問を呈する専門家もかなりいるよ)、ミンククジラ2000頭の肉なんて1万トン未満だよ。世界の飢餓人口は8億とも8億5千万人とも言われているけど、これに日本人を加えて約10億人がクジラを食べるとすると、、、まぁ、あとは小学生でもわかる計算だよ。あと、南極まで行って捕鯨するのにいくらお金がかかるか、そんなお金を飢餓の国が出せるのか、というのもブルジョワのぼくとしては問いたいところだね。本気で飢餓を救おうとするならまずは先進国が肉食を減らすのが一番合理的だよ。
http://www.whalelove.org/whales/facts/fact3

Q4

クジラを乱獲したのは鯨油だけとっていたアメリカだろ!日本は昔からクジラを余す所なく利用していたんだ!日本は何百年間も捕鯨を続けてきたのに、よその国の価値観でその伝統文化を不当に抑圧されているんだ。別に絶滅危惧種をとろうといってるわけじゃないんだ!
\________  _______________/
         \ /

        / ̄ ̄ ̄ ̄\  
        l ∨∨∨∨∨ l  
        |   \()/   |   
        (| ((・) (<) |) 
        |    ⊂⊃   |  
       | .| ⌒ \.l/ ⌒ | |   
     / |. l + + + + ノ |\   
    /   \_____/  \ 
  /   _              \ 
 // ̄ ̄(_)               |
 |ししl_l  (            |    |
 |(_⊂、__)            |    |
 \____/              |    |

    ____
    \    ───___
    <             ̄ ̄ ̄ ̄|
    > _________     |
     ̄ ̄ | /       \ |    |
        | /⌒ヽ  /⌒ヽ  |    | 
        | | /|  i \  |  |    |
        | ヽ.__ノ  ヽ._ ノ   レ⌒ヽ
       ノ   o          6 |.
      /__   \      _ノ. 
          >        ノ
         <、___   イ
             |───┤
           / |/ \ / \

 __________________/\_____________________
/                          \
 はぁ?。うんざりする俗論だね。それ間違いだから。恥ずかしいからよそでそんなこと言わないでくれよ、ジャイアン。19世紀の中頃にアメリカの捕鯨が日本の沿岸捕鯨にダメージを与えたのは本当だけど、いま特に批難されているのは日本の南極海での捕鯨なんだ。南極海の商業捕鯨では日本も鯨油だけとって残りを捨てたりしてたんだよ。おまけに南極乱獲四天王は日本、ノルウェー、英国、ソ連なんだ。20世紀のはじめに各国がこぞって参加して乱獲競争を繰り広げた結果クジラが激減したので、みんなもうやめようぜ、というのが南極の捕鯨なんだ。これについて乱獲四天王の日本に何か特別な権利があるとは思えないね。この辺は「捕鯨問題の歴史社会学」という本に詳述されているようだけど、グリーンピースの資料に引用されているので、こっちの方が手に入りやすいかもね。
http://www.whalelove.org/whales/facts/fact5

あと絶滅危惧種にちょっと関係あるけど、こんな記録があるのをキミは知っているのかい?

Genetic tracking of a protected whale
Cipriano & Palumbi, Nature 397: 307-308 (1999) より

名前 #26 
性別 雄(ただし不妊)
略歴 1965年 シロナガスクジラの母とナガスクジラの父の間に生まれる
   1989年 アイスランドによる捕鯨で殺害される(6月29日Hvalfjordur付近)
   1993年 食肉として大阪で発見される(69gで538円なり)

絶滅危惧種どころじゃない、貴重な種間雑種個体を殺した挙句に食ったんだよ。普通、希少動物を使った違法製品は税関で没収されるもんだろ。こんな事があったんじゃ捕鯨に風当たりが強くなるのも当然だよ。断っておくけど僕だって貴族のたしなみとしてスポーツハンティングを楽しむこともあるから、クジラを殺すこと自体に倫理的な疑問を感じているわけじゃないよ。

Q5
      _____
    /    - 、 - 、\
   /    , -|  ・|・ .|-ヽ  反捕鯨団体とかの言うことは
    i  /  ` - ●-′ |    どう受け止めればいいの?
.   |  i   三  |  三 |   あと、商業捕鯨は結局どうなわけ?
   | |.   __|____)   
   ヽ ヽ /      /
     ━━━━o━━
.    |   /     ヽ |
.    |   /     ヽ |

    ____
    \    ───___
    <             ̄ ̄ ̄ ̄.|
    > _________     |
     ̄ ̄ |  \  /     |    |   
        | /⌒ヽ  /⌒ヽ  .|   .|   
        | | ● |  i ●  |  |   |    、
        | ヽ.__ノ  ヽ._ ノ   .レ⌒ヽ    
       ノ   o          6 .|     
      /_______ノ   _ノ    
      \             ノ      
        ヽ 、___   .イ        
              |───┤          
            / |/ \ / \

 __________________/\_____________________
/                          \
 相手の言うことがいくら変でも、軽々しい全否定は出来ないね。相手が間違っているからといってこっちが正しいことにはならない、こっちが間違っていても相手の正しさの証明にはならない、くらいの心構えできちんと相互の意見を検証することをお勧めするよ。専門家の間で意見が一致しているのか、それとも専門家の中でも議論が別れているかを調べるのが判断のポイントだね。

 商業捕鯨に関しては、鯨類研究所の人が書いた「クジラと日本人」(大隅清治、岩波新書)の終わりの方に興味深いエピソードがあるよ。捕鯨華やかなりし頃、捕獲量を減らす必要を訴えた科学者である筆者は、捕鯨会社の取締役から「税金泥棒!」と罵倒されているんだ。工業製品の増産の工夫と違って、野生動物を資源としている以上、増産=乱獲だろうね。

鯨類シンポジウムでは専門家の興味深い発言があるよ。
http://www.iisd.ca/ymb/whales/pew2/30janj.html
シンポジウムの概要についてはこの記事。
http://www.news.janjan.jp/world/0802/0802020068/1.php


鯨類科学者の粕谷俊雄氏は、日本の捕鯨の歴史について説明し、現在の行き詰まりは利用可能な唯一の組織たるICRWが時代遅れとなってしまっていることになると指摘した。また、日本の調査捕鯨は科学的な価値があいまいであると指摘し、成長が遅く繁殖率も低い大型鯨類を年間1000頭近く捕殺していることに対する倫理観を問うた。また、粕谷氏は、日本人の大半がICRWの抜け穴を利用することに寛容であるため調査捕鯨を受け入れているのだと述べたが、日本には商業捕鯨は必要ないと主張した。

粕谷氏は小型鯨類の漁業は中止すべきであると論じたが、その根拠として、現行の管理体制では透明性が欠如していること、検査および統計データが不十分であること、漁業方式が社会構造やクジラに係る文化的多様性を損ねるものであるということ、また安全なハクジラの管理体制というものは存在しないからという点を挙げた。また、日本の調査捕鯨はICRWを誤用しており、科学者や政府、捕鯨産業を腐敗(corruption)させるものであるとし、日本の調査捕鯨を終了させるよう提案した。さらに、現在、日本鯨類研究所に務める科学者に対して新たな雇用先を提供し、オープンに情報にアクセスでき、研究の機会が得られるようにすることを提案した。


 粕谷先生はそれこそ日本の伝統と言える沿岸捕鯨についても厳しいね。これは多分彼が、沿岸捕鯨基地で1960年代から70年代にかけて捕獲記録のごまかしがあったことを見つけた人だからなんだ(2008年9月23日、訂正あり。追記をご参照下さい)。前掲のBaker & Clapham (2004)にも引用されているよ。沿岸捕鯨についてシーシェパードなんかにとやかく言われたくないけど、商業捕鯨についてはかなり厳しい規制が必要だろうね。
追記(2008年9月23日):
Yodzisの論文については専門家のコメントもご参照下さい。小学生には理解不能な数式が出てきて、

For such complex systems, one is reluctant to accept any one model, but we can apply several different modelling approaches to each given system; over a period of time (well under a millennium!), either something approaching a consensus as to the use of culls, or at least a clear notion of the critical assumptions underlying any differences in model predictions, can be built up.


などと恐ろしいことも書かれています。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/11/post_237.html

訂正:日本の沿岸捕鯨の記録改竄について
Kondo, I. and Kasuya, T. (2002) True catch statistics for a Japanese
coastal whaling company in 1965-1978. Unpublished report to the
Scientific Committee of the International Whaling Commission (SC/
54/O13). Available from the International Whaling Commission, The
Red House, 135 Station Road, Impington, Cambridge CB4 9NP, UK.

上記の論文ですが、近藤勲「日本沿岸捕鯨の興亡」山羊社(2001年)という捕鯨関係者の激白ともいえる著述を学術論文の形でまとめたのが粕谷先生ということのようです。粕谷先生が「捕獲記録のごまかしがあったことを見つけた人」というのは不正確な表現です。本の内容はGPのサイトなどで紹介されています。
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/publication/intro_kondo/index_html
スポンサーサイト

テーマ:捕鯨・反捕鯨問題 - ジャンル:政治・経済

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://3500131221.blog120.fc2.com/tb.php/15-8664acd0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad