3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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沈黙の春はワニの夢を見るか

またオスのワニが生まれなくなった要因を農薬にもとめる記述もあったが、ワニの性別は卵の温度で決まるため、その指摘自体が誤りではないかとされている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%88%E9%BB%99%E3%81%AE%E6%98%A5


 上のウィキペディアの記事には目を通していたので、Silent spring (Penguin books)を一通り読んだ後も、自分が見落としたか読み取れなかったのだろうと考えていました。しかし、訳本である「沈黙の春 ー生と死の妙薬ー」(新潮文庫、昭和49年刊)を読んだ後も、やはりワニについて何か書いてあったという覚えがありません。もう一度「ワニ」という言葉を探してはじめからページをめくっても、「ワシ」や「ダニ」しか見つけられませんでした。Silent spring巻末のインデックスにもalligator, crocodile, caiman, feminizationなどのキーワードは見当たりません。(余談ですが、Silent spring巻末には参考文献一覧と索引があるのですが、私の持っている1974年刊行の新潮文庫版では省略されています。最近のはどうなんでしょうか?)

 レイチェル・カーソンは「沈黙の春」の中でワニに言及しているのでしょうか?

 今やデジタル時代、Silent springの全文がpdfで手に入ります。このファイルにalligator, crocodile, caiman, gharial, feminizationなど考えうるキーワードで検索をかけても、それらしき記述は見当たりません。Robin, monkey, frogなどはきちんと見つけ出すので検索機能が壊れているわけでもなさそう。

 ウィキペディア以外にも、「沈黙の春」がワニの性決定を論じているという人たちがいます。




レイチェル・カーソンが『沈黙の春』でワニのメス化、サカナのメス化は、一部、食品容器に含まれている化学物質による作用かと指摘しました。
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/otaku/11995/1260333380/302n-


 しかしこの本には現代の科学からは間違っている記述もある。たとえば前に述べたように爬虫類であるワニは水温の上昇のために雄雌の比が変わってしまう。温暖化の影響でこのようになるのだが、カーソンは化学薬品の影響だとしていた。
http://shima3.fc2web.com/shoukoku2-minamatabyou.htm


 複数の人が「沈黙の春」にワニについての記述があると断言していますが、前述のとおり、私は「沈黙の春」の中にワニという単語すら見つけられませんでした。もしもワニについての記述が「沈黙の春」の犯した代表的な間違いであるなら、該当する部分を引用して詳しく論じている人がいてもよさそうなものですが、大雑把な記述ばかりです。「沈黙の春」がワニに言及しているという英文の記事も見つけられませんでした。「沈黙の春」の中で、化学物質による生殖細胞や生殖器官、性ホルモンへの影響を論じているのは13章と14章ですが、そこにもワニにあたる言葉は出てきません。
 
 いまのところ考えられる可能性は以下のとおりです。
1)私が見落としているだけで、「沈黙の春」のどこかにワニについて書かれている。
2)加筆もしくは削除により、「沈黙の春」にはワニが登場する/しないの複数のバージョンが存在する(改訂版の話はあるけれど、カーソン自身が加筆修正を加えたわけじゃないし)。
3)ワニへの汚染物質の影響を論じた別の本と混同された(この可能性が一番高いと思う)。

 そしてもう一つ重要な点は、ワニの性を決定する因子は温度だけで、化学物質は全く無関係なのかという所です。ウィキペディアの「沈黙の春」の項目にワニの話が最初に登場したのが2006年(ちなみにダイオキシン(dioxin)という言葉も私の持っている「沈黙の春」やSilent springには出てこない)ですが、2008年発表の論文でも、ワニをモデルとして化学物質による内分泌の攪乱が論じられています(http://bioscience.oxfordjournals.org/content/58/11/1027.full)。そして温度以外にも化学物質がワニの性決定に影響するという報告はずっとあるわけです。

Sex reversal by estradiol in three reptilian orders.
Bull et al., Gen Comp Endocrinol 70:425- (1988)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3417117

Alterations in steroidogenesis in alligators (Alligator mississippiensis) exposed naturally and experimentally to environmental contaminants.
Crain et al., Environ Health Perspect 105: 528– (1997)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1469881

Developmental alterations as a result of in ovo exposure to the pesticide metabolite p,p'-DDE in Alligator mississippiensis.
Milnes et al., Gen Comp Endocrinol 144:257- (2005)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16112671

 ワニの性比を歪めているのは温暖化のみで、化学物質は関係しないという専門家のコンセンサスがあるとも思えません。もし仮にカーソンがワニの性について化学物質の影響を論じていたとしたら、それは現在から見て間違っていることではなく、むしろ彼女の慧眼というべき点でしょう。
追記 2014.7.8
 レイチェル・カーソンの著作に詳しい人たちに問い合わせたところ、やはり「沈黙の春」の中にワニの記述は出てこないということです。また、訳文のバリエーションはいくつかあったとしても、原著に追記などがなされたこともないだろうという話です。

 爬虫類の性決定の温度依存性の最初の報告はいつなのか、についてはオリジナルを見つけられませんでしたが、

内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の生物への影響
井口泰泉 臨床環境8: 62- (1999)
http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/healthy/jsce/jjce8_2_62.pdf

によりますと1966年、トカゲの報告が最初のようです。蛇足ながらカーソンは1964年に死んでいます。

 またこちらの資料でも、アリゲーターの性決定は温度以外にも環境ホルモンの影響を受けるとされています。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/topics/pdf/130121_2.pdf

 「沈黙の春」がワニの性決定を論じているという話は、私が見た限りでは、ウィキペディアの記述が一番古いので、ウィキペディアに書かれたデタラメが鵜呑みにされているのでしょう。

「沈黙の春」にワニが出てくると主張する人。


この人は2年後に発見される事実を予め知ることが出来るらしい。
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