3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

完全養殖はウナギを救うか?

 かなり悲観的な見方もあるウナギの現状ですが、完全養殖技術の開発という話もあるようで。

http://matome.naver.jp/odai/2135968128772312801

 ところでDr-Setonさんは捕鯨を語る中で、環境保護の観点からウナギの完全養殖に懸念を示しています。
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080115/1200386784
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080117/1200559138

 この懸念はもっともで、米国のサケ保護ではすでに現実のものとなっています。

Hatcheries and Endangered Salmon
Myers et al., Science 303:1980 (2004)
http://www.fmap.ca/ramweb/papers-total/Myers_etal_2004_Science.pdf

 上のサイエンスの記事では、養殖と自然のサケを同一のものと見なせないことや、養殖サケが放流された場合、天然のサケの生存を脅かす可能性があることなどが指摘されています。NOAAのサイトにも同様の記述があります(最後の段落)。
http://www.nmfs.noaa.gov/pr/species/fish/salmon.htm

 この意見がサイエンスに発表された背景がSeth Shulmanの「Undermining Science」で説明されています。この本はブッシュ政権下で政治的圧力により科学が歪められたケースを集めたものですが、野生動物保護政策が被った被害の中に上のサケの話があります。養殖と天然では生物学的な違いがかなりあるため、両者を同一視するのは適切ではないという科学者の見解にも関わらず、この二つが保護政策上同一のものとして扱われ(養殖の個体数が天然の個体数に上乗せされ)、保護政策が骨抜きにされました。自然保護よりも開発を望む材木業界よりの弁護士がNOAAのスペシャルアドバイザーとしてブッシュにより任命され、保護政策が後退したことを著者のShulmanが明らかにしています。(ブッシュが去った後どうなったんだろ?)野生生物の生息環境を保護するよりも、開発を押し進める産業界の利益を優先させるために、専門家の意見がないがしろにされたわけです。

 米国と日本、サケとウナギの違いはあれども、いまの日本でもし仮に完全養殖ウナギの商用供給が可能になったらどうなるかを想像するのは難しいことではありません。ウナギへの漁獲圧は下がるでしょうがかもしれませんが、いままでの乱獲乱食を反省することもなければ、環境保護(ウナギ減少の原因の一つは河川環境の人為的変化)も省みられなくなり、プロジェクトなんたらみたいな美談だけが強調されそう。

Undermining scienceの中に養殖のサケについてMyersのコメントがあります。

"a massive amount of research shows that domestication occurs rapidly in hatchery fish"

"Within a few generations, these fish quickly evolve into something different, and lose their ability to survive in the wild."


 魚も環境も(そしてクジラも)門外漢の私の想像ですが、人工環境中でライフサイクルが完結するなら、そのウナギも急速に適応力を失うんじゃないでしょうか。実験室でずっと飼われているモデル動物の「野生型」も同様ではなかろうかと。

 ウナギの完全養殖技術を責める気はありませんが、その技術を社会がどう受け止め利用するかを想像すると、私もまた素直に成功を祈れないのです。

Wild salmon could decline or go extinct while only hatchery fish persist.
Myers et al., Science 2004

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