3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

我らをめぐるプラスチックの海

 プラスチック文明が引き起こすプラスチック汚染の環境と人間への影響について、調査と対策が必要です。

Silent spring in the ocean
Worm, Proc Natl Acad Sci USA 112: 11752 (2015)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26330606
 カーソンが「沈黙の春」を著した当時はDDTが有害とは全く思われていなかったのと同じように、無害と思われていたプラスチックがゴミとして思いもよらぬ影響をもたらしていることを訴える論文です。プラスチックゴミの海鳥への影響(消化管閉塞とゴミによる物理的拘束)のほか、微小プラスチック片特有の他の汚染物質との複合汚染も解説されています。問題解決のために、環境中へ放出されるプラスチックの量を減らすことの緊急性を指摘しています。

Marine plastic debris emits a keystone infochemical for olfactory foraging seabirds
Savoca et al., Sci Adv 2: e1600395 (2016)
http://advances.sciencemag.org/content/2/11/e1600395
 多くの海鳥がプラスチックを誤食する理由のひとつに、プラスチック上に生えた藻類により、オキアミと同じ臭いをプラゴミが発するようになるからという研究が発表されました。餌を探すのに臭いを手がかりとしている動物は海鳥だけでないので、こうした他の動物にも同じことが言えるのではないかと著者らは推論しています。

Bottles, bags, ropes and toothbrushes: the struggle to track ocean plastics
Cressey, Nature 536: 263 (2016)
http://www.nature.com/news/bottles-bags-ropes-and-toothbrushes-the-struggle-to-track-ocean-plastics-1.20432
 ネイチャーのニュース記事では、大きさが1ミリより小さいマイクロプラスチックの由来(多くは大型プラスチックの劣化などによる破砕)とともに、海に流れ込むプラスチックの見積もりと、実際の観察から見積もられたプラスチックの量には大きな隔たりがあり、行方不明となっているプラスチックが相当量あることが指摘されています。そして、微小プラスチックの問題について、証拠をこれ以上待つよりも、いま行動を起こさなければならないという研究者の合意があることを伝えています。

また、映画もあります。
A Plastic Ocean (2016)
http://www.plasticoceans.org/film/index.html
 サーファー兼ジャーナリスト兼映画製作者のリーソンが、海にあるプラスチックゴミの量に衝撃を受けて制作された映画。「もし我々が行いを改めなければ、2050年には魚よりもプラスチックの方が多くなっているかもしれません。」

プラスチック汚染の概説と対策はLiらが概説しています。
Plastic waste in the marine environment: A review of sources, occurrence and effects
Li et al., Sci Total Environ 566-567: 333 (2016)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27232963
01li et al
 海のプラスチックゴミの8割は陸上由来、2割は漁業活動など人間の海洋での活動によるものです。これらのゴミが直接的もしくは間接的に海鳥、海獣、ウミガメなどの生存を脅かすメカニズムを概説した上で、法規制による汚染の防止を筆頭に、プラスチック業界の責任や消費者の注意喚起という解決策を提示しています。

小さいサイズのプラスチック片が残留性有機汚染物質の運び屋になることはda Costaらが概説しています。
(Nano)plastics in the environment – Sources, fates and effects
da Costa et al., Sci Total Environ 566-567: 15 (2016)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27213666
02 da costa03 da costa04 da costa
 「ナノプラスチック」「マイクロプラスチック」に統一された定義があるわけではありませんが、これらの微小プラスチックは相対的に表面積が大きく、残留性有機汚染物質(POPs)と化学的親和性が高いこともあり、生物への影響が懸念されています。環境中のナノプラスチックの挙動はほとんど不明ですが、ナノサイズのプラスチックは細胞の中へ入ってくること(Salvati et al., 2011)、メダカでは脳血関門を通過すること(Kashiwada, 2006)は、ナノプラスチックに意外な毒性がある可能性を示唆するものです。また、生分解性をうたうプラスチックの中には、実のところ分解されない微小片が残るものがあり、これが微小プラスチックゴミとしてより多くの問題を引き起こすことを指摘しています。
 (論文中では触れられていませんが、プラスチックを多く生産消費する陸上でも、場所によっては(工場とか)大気中に飛散したナノプラスチックが高濃度になっており、健康に影響している可能性があるのではないかと思いました。)

Environmentally relevant concentrations of microplastic particles influence larval fish ecology
Lönnstedt & Eklöv, Science 352: 1213 (2016)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27257256
 サイエンスに掲載された論文では、マイクロプラスチックはヨーロピアンパーチの稚魚の生存率を下げることが示されました。

 海に流れ出したプラスチックゴミは海洋生物の生存を脅かし、それが人間にも影響してくるであろうことが容易く予想されます。冒頭でWormが指摘していたとおり、カーソンが提示した問題は存在しつづけ、より重大になってきています。

 対策としては、プラスチックを自然環境中にこれ以上放出しないための制度作りが肝要です。

A Canadian policy framework to mitigate plastic marine pollution
Pettipas et al., Marine Policy 68: 117 (2016)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308597X16300665
 プラスチック汚染を軽減するための大まかな施策として以下の4つが挙げられています。1)法整備とゴミ管理、2)教育啓発と知識の普及、3)汚染源の同定、4)モニタリングと調査。
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