3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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花は盛り 月は隈なき 氷山は一角

 今日の代表的なニセ科学というとホメオパシーやEM菌です。一方で、歴史修正主義の典型と言えるのがホロコースト否定論や南京大虐殺否定論です。こうした怪しげな説のリストに目を通しておくのは初学者にとっては助けになるかもしれませんが、リスト作成者の手腕も問われるところです。また、リストを丸暗記するだけであるならば、それは受験のテクニックであっても科学とは何の関係もない行為です。

 最近特に気になっているのは、こうしたあからさまなニセ科学や歴史修正主義(とそれを裏打ちする露骨な差別感情)には加担せず、むしろ批判したりする人間が、別の疑似科学や差別に加担することがあるのを目にすることです(たとえばここでまとめたことなど)。ニセ科学批判にしろ在特会批判にしろ、それをやることは重要な意義があります。しかしそれをやっている人間が別のニセ科学や差別に加担するのではせっかくの批判も台無しです。

 在特会批判について私が抱いた違和感は他の人も表明しています。例えばかの有名な藤原監督とか。私の考えも、「別に「朝鮮人を殺せ」と怒鳴ることだけが差別じゃない。」という点に集約されます。
http://toshifujiwara.blogspot.co.uk/2013/07/blog-post_17.html

(次に、ニセ科学批判をしている人間がニセ科学を広める例について述べます↓)

 またニセ科学についてですが、下のリンク先の記事で言われているとおり、EM菌に推進者達がうたうような効果など期待できないし、放射線対策の妨害にしかならないという批判はまさにそのとおりです。そしてニセ科学を減らすための方法として信頼できる情報を増やすことが提案されています。

発信の内容については、「○○のサイトにもう書いてあったことだから、自分はもういいか」ではなく、同じようなことを書くことにも意義があります。「どこかにもこういうことが書いてあったな、××さんもそう言っていたな、じゃあこれはやはり正しいのかな」と、情報の信頼性が増すことにつながるからです。重複した情報は単なる無駄ではなく、力につながります。
http://blog.livedoor.jp/route408/archives/52110636.html


 ところで有機化学ナントカってどこかで見たと思ったらあのデマの発生源の一つだった。

スリランカでは1948年から62年までDDTの定期散布を行ない、それまで年間250万を数えたマラリア患者の数は31人にまで激減しました。この数はDDTが禁止されてから5年のうちに、もとの250万人まで逆戻りしています。
http://www.org-chem.org/yuuki/DDT/DDT.html


 ウィキペディアにもパクられてる(2013年10月10日の時点)。
wiki-ddt
 スリランカでは、マラリア根絶計画の一環としてDDTが噴霧されました。そして患者の減少に伴い噴霧の規模も縮小され、1964年にマラリア根絶計画の次のフェーズへ移行するためにDDT散布は取りやめられました。しかしその後、マラリア監視体制が機能せず再流行が起こり、DDT噴霧を再開してもこのときには蚊が耐性をつけていたため流行を食い止めることが出来ませんでした。これがスリランカで起きたことです。実際のマラリア対策には様々な問題があったのですが、これを極めてシンプルにDDTさえ撒いていればマラリアが防げたかのように言うのはニセ科学というものでしょう。参考:http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-132.html

 これをふまえてもう一度これを読むと違った味わいを感じられます。また引用しようか。おもしれーから。

発信の内容については、「○○のサイトにもう書いてあったことだから、自分はもういいか」ではなく、同じようなことを書くことにも意義があります。「どこかにもこういうことが書いてあったな、××さんもそう言っていたな、じゃあこれはやはり正しいのかな」と、情報の信頼性が増すことにつながるからです。重複した情報は単なる無駄ではなく、力につながります。
http://blog.livedoor.jp/route408/archives/52110636.html


「重複した情報は単なる無駄ではなく、力につながります」
「重複した情報は単なる無駄ではなく、力につながります」
「重複した情報は単なる無駄ではなく、力につながります」
「重複した情報は単なる無駄ではなく、力につながります」
「重複した情報は単なる無駄ではなく、力につながります」

 正しさの根拠は「みんなが言うから」。もはやデマがどのように拡散していくのかという説明にしかみえん。こうして「カーソンのせいでDDTが禁止されマラリアが蔓延した」というウソが蔓延ったわけだ。

 満開の桜や満月だけが美ではないというようなことを古人が言っていましたが、ニセ科学や修正主義というものはEM菌や南京大虐殺否定論みたいなあからさまなものだけに限定されないし、その背景にまで切り込むのなら単に知識の○×が問われているだけではないのだよ、と言いたい。これと同じことで、在特会を非難していれば差別に加担せずに済むと思いこんでいるなら、ホメオパシーやEM菌や水伝の悪口を言っていれば自分に科学リテラシーとやらがあると思い込むのと同様のマヌケと申せましょう。在特会は氷山の一角であり、これをどう捉えるかは、海面上に顔を出した一部にしか注目しない人間と水面下の巨大な氷塊を意識する人間とで当然分かれてくるわけです。愛国心は悪党の最後のよりどころという言葉もありますが、お手軽に自分に「正しさ」を付与したいなら、在特会批判やニセ科学批判に便乗することほど楽なやり方はありますまい。
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R is for Rachel (5/5)

レはレイチェルのレ 最終話 エピローグ 

罪はずいぶん庇い立てされるが、無実のほうはそんな庇護を見出せるどころではない世の中である。 ラ・ロシュフコー


前回までのまとめ
 第1話、第2話ではマラリアがどう論じられているかを概観しました。南アフリカのKwaZulu-Natalで起きた90年代のマラリア流行は、DDTを合成ピレスロイドに置き換えたところピレスロイド耐性蚊が発生し、DDTの再使用で制圧されたというものでした。この流行の原因と考えられる可能性は多数ありますが、専門家はこの件を大まかにはピレスロイド耐性蚊の発生による流行とまとめています。

 マラリアの背景は非常に複雑で不均一なので、どの対処法がどの程度有効かは状況に依存します。DDT室内噴霧は広く知られた有効な手段ですが、いついかなる場合でも有効という保証はありませんし、これがもっとも有効であるという証明もありません。流行の原因を詳しく理解しないまま何かするのはむしろ有害となる可能性すらあります。そして、各種マラリア対策を適切に管理運用できる体制やそれを支える予算の拡充が求められています。またDDTの環境や健康への影響はないとは言い切れないので、使用する際には注意深いモニターが必要です。

ところがその後、DDT禁止には大きな問題があることが判明しました。
マラリア感染が発展途上国を中心に増えてしまったのです。
http://www.mizuho-s.com/kenkou/kenkou137.html


 本当にマラリア対策を理解しているなら、上のようなマラリア流行の原因をDDT禁止に求める一般化が不適切で、カーソンに言及する必然性もないことがわかります。

 第4話では専門家による「沈黙の春」の評価を紹介しました。カーソンの指摘した問題は今なお重要な意味を持っています。そして科学的な確実さのない状況でよりましな選択をするための知恵も蓄えられつつあります。

 第3話を手短に3行でまとめるとこうなります。
薄っぺらな理科の知識に安住して
自分で勉強する手間を惜しむ奴は
未来永劫うんこに転生し続けろ。

 カーソンの伝記作者であるLinda Learは、「Silent Spring」に寄せたあとがきの中で、マルクス「資本論」やダーウィン「種の起原」などと一緒に「沈黙の春」を並べて、歴史を変えた書物としています。ダーウィンによって広く知られるようになった進化という考えは生物学にとどまらず社会にも大きな影響を与えました。中には進化論を人種差別政策の理論的支柱に据える動きもありましたが、それをもってダーウィンの価値をおとしめる意見はごくまれですし、そういうのはそもそも相手にされていません。また、進化についての通俗的誤解も多く存在しますが、誤解を招くからダーウィンは進化論など唱えるべきではなかったという主張も見たことがありません。内容が正確に理解されないまま議論が社会の中に広がっていく点、「沈黙の春」も「資本論」や「種の起原」と同じようなものでしょう。

 今思い出しているのは、「ピーボディ先生のりんご」という絵本です。物語の最後、ピーボディ先生は「大切なのは、どう見えたかじゃなく、本当はどうか、なんだよ」と少年に語りかけます。ピーボディ先生がカーソン、少年が不祥(不肖ではない)ワタクシ、そして散らばった羽根こそが『「沈黙の春」のせいでマラリア蔓延』というウソなのです。「ジュラシックパーク」で制御出来なくなった恐竜が繁殖したように、ウソも増殖します。これに比べればDDTをバラまいたことなどまだマシです。撒いた以上に増えることなどないのだから。

 Carson correctly feared the results of an unimpeded technology that initiates an action before fully knowing the consequences, and a culture that demands a quick fix for every problem. Such attitudes, she recognized, were formidable opponents to the cultivation of a sense of wonder and a reverence for the complex of intricate ecological relationships of the living world. In Silent Spring Carson gave these cultural qualities a historical context, protested their effects, warned against complacency, and offered a new ethic and a practical sort of hope. Hers is a message that we in the twenty-first century must find the courage to heed.
Linda Lear



意訳
 カーソンは、結果的影響を熟知する前に活動を始めてしまう規制なき技術の帰結と、全ての問題に素早い解決を求める文化を正しくおそれた。彼女は、そのような態度が、センスオブワンダーの涵養と生命世界の複雑な生態関係の複合体への敬愛にとって恐るべき敵であることを認識していた。「沈黙の春」の中でカーソンはこれらの文化的性質に歴史的文脈を与え、これらの影響に抗い、ひとりよがりな考えに警告を発し、新しい倫理と実践的希望を提唱した。本書は、21世紀の我々は心に留めておくべき勇気を見つけなければならないという、メッセージである。
リンダリアによるSilent Springのあとがき ISBN 9780141184944

 そしてまたウソが増えていく。こういうウソを根絶するDDTみたいな魔法の薬はないもんか(毒。
https://twitter.com/sochi1024/status/91645192880402433
https://twitter.com/basizm/status/385004613729931265
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1090826265

前の話 R is for Rachel (4/5)

R is for Rachel (4/5)

レはレイチェルのレ 第4話 「沈黙の春」の現在の評価

「失敗には達人というものはいない。人は誰でも失敗の前には凡人だ。」 プーシキン「大尉の娘」


 「沈黙の春」出版から50年の節目ということで、サイエンスに2つの論評が掲載されました。

Insecticide Resistance After Silent Spring
Heckel, Science 337: 1612- (2012)
http://www.sciencemag.org/content/337/6102/1612.summary

 全文はここで。
http://pubman.mpdl.mpg.de/pubman/item/escidoc:1544139/component/escidoc:1695303/HEC233p.pdf

 一つめは殺虫剤抵抗性の獲得メカニズムを概観し、通常の作物でも遺伝子組み替えでも害虫への対応は一筋縄ではいかないことを論じたものですが、最終段落をこう締めくくっています。

Forewarned by the long history of insecticide resistance, the deployment of transgenic crops for insect control has incorporated resistance management plans from the beginning. Unfortunately, this has not been the case for transgenic crops engineered for herbicide tolerance. Greatly increased spraying to control weeds in these new crops has led to a rapid rise of herbicide resistance in several weed species (24), and agronomists must now follow entomologists in learning the hard lessons of the past 50 years.


 文献24はは2011年に発表されたもので、グリホサート耐性種への対応がようやく模索され始めたことを論じています。

Herbicide-resistant weed management: focus on glyphosate
Beckie, Pest Manag Sci 67: 1037– (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21548004

 グリホサートの代表的なものがモンサント社のラウンドアップであることを考えると、彼らはカーソンから何も学んでいないのではないかとさえ思えます。釈迦の掌上のサルのようなもので(この場合カーソンが釈迦)、さらに悪いことにこのサルは自分が釈迦の掌上にいることにいつまでも気がつかないため、三蔵法師の旅に加わることもないのです。

 もう一つは汚染物質への曝露が複雑な影響を長期的にもたらす可能性を論じたものです。

Life in a Contaminated World
Guillette and Iguchi, Science 337: 1614- (2012)
http://www.sciencemag.org/content/337/6102/1614.summary

 全文はここで。
http://www.csub.edu/~kgobalet/files/Bio605/Guillette2012_ContamWorld.pdf

 過塩素酸塩の甲状腺への影響が体内のヨウ素濃度によって変化することなどを例に、汚染物質の健康への影響は、遺伝的及び環境的な諸々の要因を考慮に入れなければならないと説きます。汚染物質に加えて、栄養状態やストレスなどの環境要因と、エピジェネティックな修飾を含む遺伝的要因が複合的に現在と未来の世代に影響を与える可能性を論じています。汚染物質の複合的な影響や長い世代にわたる影響については今後も注意深く見張っていく必要があります。ところで著者達は言及していませんが、汚染物質には化合物以外にも、新たに加わったセシウムやストロンチウムなども当然含まれますよね。「沈黙の春」の中にも放射性物質への言及がありますし。

 世界を汚染してしまったのは、人間の明白な失敗です。放射能を含む低濃度汚染物質の健康や環境への長期的影響について何か断言できる人間がいるとすれば、その人は各個人の遺伝的バックグラウンドや栄養状態と汚染物質の影響(Guillette and Iguchiが解説したような諸条件)を直ちにすべて解析出来る能力を持った人か、プーシキンが存在しないと言った失敗の達人でしょう。

 マラリアを防げるかもしれない一方で健康や環境への被害があるかもしれないのがDDTですが、こんなふうに科学的な結論がはっきりしない状態で何か決めなければならないとき、どうすればいいのでしょうか。この間読んだ本にヒントらしきものがありました。

Sheila Jasanoff, a professor of science and technology studies at Harvard University, has clearly refuted the fallacy that "the facts" present us with some inevitable and perfect technical solution to policy problems. Rather, as Jasanoff explains:
"In regulatory science, more even than in research science, there can be no perfect, objectively verifiable truth. The most one can hope for is a serviceable truth: a state of knowledge that satisfies the test of scientific acceptability and supports reasoned decision making, but also assures those exposed to risk that their interests have not been sacrificed on the altar of impossible scientific certainty."

Shulman, Undermining science: Suppression and distortion in the Bush administration University of California Press (2008)


 ちなみに引用符の中の言葉はJasanoffの著書 "The Fifth Branch: Science advisors as policy makers" からの引用だそうです。

意訳
 ハーバード大学の科学技術論の教授であるSheila Jasanoffは、「事実」が政治問題に必然的で完璧な技術的解法をもたらすという誤謬を明確に否定した。Jasanoffはこう説明する。
「レギュラトリーサイエンスには、研究調査科学がそうである以上に、完璧で客観的に立証出来る真実などない。最も望めるのは実用的な真実である。すなわち、科学的に受容可能であり、筋の通った意思決定をサポートし、なおかつリスクに曝される人々の利益があるはずのない科学的確実性の名の下に犠牲にされていないことを保証する知のあり方である。」

 リスクにさらされる人びとの利益を、科学的事実を求めるふりをして踏みにじるのがサウンドサイエンスの特徴の一つです。公害の被害者などにとってより重要なのは、因果関係の科学的証明よりも人権の回復の方なのですが、「真実」にこだわる装いで人権救済措置を遅らせるのがサウンドサイエンスであり修正主義ということでしょう。人権の回復を求める者への憎悪が修正主義の根源という話にはすごーく説得力を感じます。

前の話 R is for Rachel (3/5)
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