3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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きれいは汚い、汚いはきれい

Fair is foul, and foul is fair:
Hover through the fog and filthy air.
Macbeth (1.1. 11-12)


 私もつい最近知ったばかりなのですが、「健全な科学(=サウンドサイエンス)」と「ジャンクサイエンス」は政治的な意味を持つ言葉です。ネットで用例を見ると、証拠に基づく風通しのよい議論という意味で健全な科学という言葉を使ったり、専門家の支持を受けていない話をジャンクサイエンスと呼んだりしている人もいるので、私だけが特に疎かったというワケではないようです。例えばシドニーホルトも鯨食害論をジャンクサイエンスと呼んでいます(Holt, Whales competing? 2006)。こうした素朴な用例とは裏腹に、日経サイエンス2005年10月号に掲載された「悪用される科学」という論文には、企業に都合の悪い研究が「ジャンクサイエンス」と呼ばれ、逆に法規制の不要性を支持するような都合のいい研究が「健全な科学」と呼ばれる実態が解説されています。

 つまり、通常の科学に照らした場合「ジャンクサイエンス」が健全な科学で、「サウンドサイエンス」がジャンクサイエンスとなることが多々あります。多少ややこしく感じますが、「健全な科学」「サウンドサイエンス」を、サウンドサイエンスイデオロギーと呼べば混乱は避けられるでしょう(参考:「我々は『健全な科学』という言葉を、証拠の質的保証という意味ではなく、『健全な科学』イデオロギーをさすことのみに用いる」 Neff and Goldman, 2005)。

 法的規制をかわすために、確実な科学的証拠を求めるポーズをするのがサウンドサイエンスイデオロギーの手口であり、タバコの有害性を巡る議論はその代表例です。Merchants of doubt第5章には、受動喫煙の有害性を示した研究が「ジャンクサイエンス」と攻撃された顛末が解説されています。American Journal of Public Healthは2001年11月号でTOBACCO, LAWYERS, AND PUBLIC HEALTHという小特集を組んで、サウンドサイエンスイデオローグによる科学への攻撃を検証しています(下に一部を抜粋)。

Turning Science Into Junk: The Tobacco Industry and Passive Smoking
Samet and Burke, American Journal of Public Health 91: 1742–1744 (2001)

In this issue, Glantz and Ong offer a powerful analysis of the tobacco industry’s attempt to discredit the scientific evidence on passive smoking, particularly the industry’s use of the label “junk science.” Environmental epidemiologic studies in other arenas have also been targets for the “junk science” label.


Junking Science to Promote Tobacco
Yach and Bialous, American Journal of Public Health 91: 1745–1748 (2001)

This commentary discusses the ways the tobacco industry has created controversy about risk assessment and about the scientific evidence of the health hazards of secondhand smoke.


Constructing “Sound Science” and “Good Epidemiology”: Tobacco, Lawyers, and Public Relations Firms
Ong and Glantz, American Journal of Public Health 91: 1749–1757 (2001)

Public health professionals need to be aware that the "sound science" movement is not an indigenous effort from within the profession to improve the quality of scientific discourse, but reflects sophisticated public relations campaigns controlled by industry executives and lawyers whose aim is to manipulate the standards of scientific proof to serve the corporate interests of their clients.


 サウンドサイエンスという言葉が使われていなくても、サウンドサイエンスイデオロギーがあらわれる事例があります。水俣病の有機水銀説に対する懐疑とその議論の経緯は、まさにサウンドサイエンスイデオロギーによる規制逃れの見本です。歴史修正主義の議論にも相似形を見いだせます。特定の事件の証明にだけ異常なほどの質と量の証拠を求めるやり方です。

 ニセ科学と歴史修正主義に似たところがあるように、サウンドサイエンスイデオロギーと修正主義にもまた類似性があるように見えます。例えば、私がサウンドサイエンスイデオローグ集団と規定するところの(本人達もサウンドサイエンスをプロモートすると公言しているが)ACSHがレイチェルカーソンを攻撃し、そうしたカーソンへの攻撃をオレスケスらが修正主義と喝破しています。さらに私が頼んだわけでもないのに都合のいい事例となってくれる人がなぜかあらわれるのです。下の記事で秦郁彦氏が相当な分量をさいて受動喫煙に懐疑を呈していますが、上に示した通り「ジャンクサイエンス」と攻撃された受動喫煙の有害性は専門家が一致して支持しているもので、「ジャンクサイエンス」と難癖をつけた方が科学的に間違っているのです。

「受動喫煙=悪」の拡散は慰安婦問題の嘘と同じ構図との指摘
私はかつて、「韓国で慰安婦狩りをやった」などと証言した元軍人・吉田清治のウソを現地調査で暴いたが、自らの主張を通すためにいい加減な情報を政治的に利用して世論を動かしたという点で、平山と吉田は同じ役割を果たしたと言えるだろう。
SAPIO2012年6月27日号
http://www.news-postseven.com/archives/20120607_115251.html


 受動喫煙にしろ気候変動にしろ、専門家の一致した見解をジャンクサイエンス呼ばわりする懐疑論は、科学者ではあってもその分野の専門家ではない人間がピアレビューを経ない形で一般向けに宣伝するパターンが多いようです。森永卓郎さんがやたら受動喫煙研究に否定的なのは、経済誌などに掲載された受動喫煙懐疑論を鵜呑みにしたからでしょう(参考:http://intmed.exblog.jp/8159754/)。

 しかし、保守系団体がJournal of American Physicians and Surgeonsという「科学誌」を作ったことや、サウンドサイエンスイデオロギーが科学の基準に干渉しようとした(上に挙げたOng and Glantzに解説されている)ことを考えるなら、大きなカネが動く分野では今後(あるいは既に)、サウンドサイエンスイデオロギーと科学の区別が難しくなる可能性があります。一部水産官僚のせいで鯨類科学が停滞を強いられているのと同様のことがもっと大規模に起きる可能性は充分あるでしょう。サウンドサイエンスイデオローグは、鯨食害論などのニセ科学より数枚上手です。相手が(さらには自分が)学問的な正確さを求めているのか、それとも議論の足止めと時間稼ぎを目的としているのかを見極める必要があります。

A demand for scientific proof is always a formula for inaction and delay, and usually the first reaction of the guilty.
最終的に有害性を認めたタバコ産業関係者の回顧。Merchants of doubtより


But interested parties have used "sound science" mantle to demand extended research, analysis, and review of evidence for the sole purpose of delaying health-protective regulation.
Neff and Goldman, American Journal of Public Health 95 S1: S81-S91 (2005)


「データがないから何もしない」ということは、科学の悪のイデオロギーとしてとらえてください。
http://www.sanshiro.ne.jp/activity/01/k01/schedule/6_08a.htm


「被害が確認されないうちは,ないものとみなす」という考え方、あり方は誤りだ。
http://hirookay.blog.fc2.com/blog-entry-28.html


So foul and fair a day I have not seen.
Macbeth (1.3.38)

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