3500-13-12-2-1

ツーリングの記録等に使おうと思っていたが。。。タイトルは最初の記事の3500km, 13日, 12ヶ国, 自動二輪, 空冷単気筒の意。

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捕鯨脳

自分の首を絞める喫煙者
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20071227

 上の記事を読んで「1階玄関共用ロビー」が「南極海」、「喫煙」が「捕鯨」に見えてしまうのが捕鯨脳です。一連の問答も日本の捕鯨外交そっくりに見えてしまいます。

 「非喫煙者と共存しようという態度がまったく見られない。ファシズムと闘う闘士のつもりなのだろうが、こういう行動がどのような結果を招くのか想像できないのであろう。」とNATROMさんがコメントしています。喫煙が健康を損なうことは科学的に立証されていますが、私はべつに喫煙者を積極的に排除したいとは思いません。喫煙/非喫煙はあくまで個人の自由ですし、禁煙の風潮に歯向かい反逆の狼煙をあげる喫煙者には好感すら抱いています(かくいう私は煙草は止めました)。が、この件には当然ながら反感をもちます。この喫煙者がパイプをふかしながらロビーを通った程度では火事の危険性がないことや、(もし仮に)副流煙の健康被害がないことを立証できたとして、それで他の非喫煙者の理解を得られるでしょうか。「煙草を吸うのは勝手だが、公共の場での喫煙は控えてくれ」というのがいまの風潮でしょう。調査捕鯨というデタラメをやめて公海、とくに南極から撤退すれば風当たりは大分弱まりますよ(注)。

 科学とは何かを論じられるほど科学哲学を知らないのですが、ここではとりあえず科学は事実判定とそれに基づく予測であり価値判断をするものではない、としておきます。鯨食にしろ鯨見にしろこれらは文化なので、捕鯨賛成/反対についてもどちらが科学的に正しいのかという判断は出来ません。鯨食を野蛮だと非難するのは論外ですが、「クジラがかわいそうというのは非科学的で偽善だ」というのも実は同様なのです。

 では日本の捕鯨外交を分析した「商業捕鯨モラトリアム以後における日本の捕鯨外交を新しい視点で読み解く」より抜粋。

モラトリアム撤廃=商業捕鯨再開に必要な条件は何か。日本の提案が否決され続けているIWCでの秘密投票導入は、全体の75%の得票をもたらすことは到底無理であり、ましてや喧伝される票買いが同得票を獲得することは不可能である。したがって、モラトリアム撤廃のために必要とされるのは反捕鯨諸国との交渉であり、その際に以下の4 つの合理的外交姿勢が必要条件となる。

1) 敵対的雰囲気が支配的なIWCおよび日本国内において反捕鯨諸国と交渉できる環境をつくること
2) 日本がIWC科学委員会の科学的助言を尊重する国であることを反捕鯨諸国に納得させ、日本の科学(調査)活動に対する信頼を回復すること
3) 反捕鯨諸国との交渉テーブルにつくこと
4) 商業捕鯨の独自再開を見すえたIWCからの脱退戦略を策定すること

IWCにおける捕鯨外交は1970 年以来、もっとも敵対的な国際交渉の一つである。したがって、反捕鯨諸国と交渉を行うための準備として、国際交渉だけでなく、日本国内にも蔓延している敵対的雰囲気を和らげることが必要である。日本国内も同様の措置をしなければならないのは、日本の国民や政策決定者が反捕鯨国との妥協を受け容れられる素地を作らなければならないためである(上記1)。さらに、再開後の商業捕鯨はIWCの科学委員会が改訂管理方式(Revised Management Procedure=RMP)によって算定する捕獲枠にもとづくことになるため、日本が科学委員会の勧告を尊重しつづけることを反捕鯨国に納得させなければならない(上記2)。究極的にはIWCの存続そのものを脅かす4 は、反捕鯨諸国にとっては脅威であり、交渉をする上で日本の有利な取り引き材料を準備するためのものである。
ところが、日本政府はこの4 点のどれもまともに追求していない。捕鯨推進側は反捕鯨諸国を感情的、非科学的、国際捕鯨取締条約逸脱と非難するばかりであり、捕鯨問題を文化の問題であると水産庁が主張し続けることで水産庁は自らIWCでの妥協を難しくしている(政治の文化化)。捕鯨文化論は1984 年に水産庁主導の捕鯨問題検討会による公式見解となり、1975 年時点でさえ鯨肉は動物たんぱく質消費の1.7%にすぎなかった(以後さらに低下)実態と乖離を強めながら、「肉食文化と魚(鯨)食文化の衝突」、「文化帝国主義」といったアンチ欧米言説へとエスカレートし、ナショナリズムに彩られた反・反捕鯨世論を形成してきている。同時にマスコミは政府広報と化し、水産庁もIWCにおいて、オーストラリアにIWCからの撤退を求めたりするなど、他の国際会議ではあり得ない敵対的な言動をとってきた。 “(科学)調査”による鯨肉在庫が余剰傾向を示すと、2006 年に別会社をつくって新たな需要創出に動いたのも、鯨肉食が伝統文化だとの主張とは食い違う。


 多文化共生、自分の文化も相手の文化も尊重する、というなら相手のいい分に耳を傾ける必要がありますし、日本の捕鯨の無謬神話も解体されるべきです。「商業捕鯨が再開できないのは感情的で非科学的な外人のせい」ということにして調査捕鯨名目の国営捕鯨を永続化するのが狙いだから、国際交渉決裂、調査目標滅裂ということになるのでしょう。

(注)ただしアイスランドが自国沿岸で商業捕鯨を開始したところ、ホエールウォッチング目当ての観光客が減少したという話もある。
Iceland shunned over whale hunting
Williams, Current Biology 16: R975-R976 (2007)
A new programme of commercial whaling has angered Iceland's neighbours and looks set to damage its tourist industry. Nigel Williams reports.

Iceland's start-up of commercial whaling this summer appears to be having a dramatic effect on the country's booming ecotourism and whale-watching holidays. One major British tour operator has reported a 25 per cent drop in bookings since the country resumed whaling last month.


アイスランドが国際的なモラトリアムと抗議に反し商業捕鯨を再開
http://www.ifaw.org/ifaw/general/default.aspx?oid=196055

ちなみにアイスランドの捕鯨はその後、採算がとれず中止に追い込まれている。

日本の市場狙いだったアイスランドの「商業捕鯨」が1年で中止に
http://www.news.janjan.jp/world/0708/0708280441/1.php

アイスランドが商業捕鯨を中止に!
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/sato/91

アイスランドが商業捕鯨中断
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/08/post_187.html
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野蛮な行為は廃止しろ

こちらなど読んで。

木で鼻をくくるお手本
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20070607/p1

IWC脱退だって?
http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C1634184641/E20070604212952/index.html

アイヌ儀式「イヨマンテ」禁止通達、52年ぶり撤廃(魚拓)
「野蛮な行為で廃止されなければならない」
「野蛮な行為で廃止されなければならない」
「野蛮な行為で廃止されなければならない」

 ちなみにギャレット豪環境相は調査捕鯨を「残酷かつ野蛮な行為」と評しています。

「原住民生存捕鯨」に関する日本政府の考え方について
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/sato/74
アイヌというのは先住民族であることすら未だ認められていない人達なのですねぇ。。

他の国はどうなってるのか。
カナダ首相、先住民に謝罪
http://d.hatena.ne.jp/o-kojo2/20080612

オーストラリア : 先住民族に対する虐待を謝罪
http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=438


オーストラリア:豪首相の手腕に注目 先住民に初の公式謝罪
http://www.news.janjan.jp/world/0803/0803021834/1.php

Dr-Setonさんの自滅する捕鯨シリーズでも日本の先住民の話が出てきます。
最後の 自滅する捕鯨
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080118/1200645505


ウィルタ協会
http://www.d2.dion.ne.jp/~bunkt/

アイヌの捕鯨
http://kkneko.sblo.jp/article/15783244.html
http://chikyu-to-umi.com/kkneko/rekishi.htm

 捕鯨の話にからめてオーストラリアのかつての先住民政策を非難する意見がありますが、他国を罵倒できるほど日本はえらいのか?なんか謝罪の姿勢を見せているだけオーストラリアの方がましにみえるんですが。捕鯨について科学分野に集中して論じてきましたが、文化や政治からみても興味深いです。しかも規模が程よく小さいので扱いやすいのです(原子力や二酸化炭素・窒素酸化物排出とかだと範囲がかなり広くなりそうですね)。研究していて面白いテーマだと思います。

「たとえば研究予算を申請するときには『この研究は東アジアの酸性雨に関する外交に役立ちます』と書くわけですが、学術研究をしているだけでは外交に役立つとは限らないんですね。日本の科学者は政治に手を出さない傾向がありますが、僕は『どういう科学が、外交に影響力を与えることができるのか』を追求したいんです。捕鯨問題は、『調査捕鯨は本当に科学なのか、持続可能な捕鯨はあり得るのか』が問われているという点で、外交科学の一つのケーススタディとしてとらえることができるわけです」http://www.news.janjan.jp/living/0802/0802120675/1.php


 何を食料とするかという感覚は科学で決められるものではありません。だからこそ科学者である粕谷先生はこのように言ったのだと思います。「捕鯨賛成か反対かというような問題については元来、感情的、感覚的で構わないものだと思う」
http://www.hars.gr.jp/katudo-houkoku/59th%20getureikai/59thmonthly.htm

 他人の文化に異議を唱えても構わないと思いますが、やり方は厳しく問われます。
シーシェパード → カナダ先住民によるアザラシ猟を妨害
http://d.hatena.ne.jp/o-kojo2/20080402#p1
日本 → 先住民族生存捕鯨に嫌がらせ
http://www.news.janjan.jp/world/0706/0706150352/1.php
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2002/kitoh.html
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=318

 まぁ、人がどう考えようが勝手かもしれませんが、日本のやり方はごねてるだけでみっともないですな。シーシェパードの方が単純バカな分まだマシな気がします。

興味深いと思ったもの。
「野蛮な」文化について
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080120/p1

クイズ
:「ク」のつく動物を殺すのは野蛮だから廃止しろと言った国はどこ?

:はーい、それはボクの国でーす。

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ヌーシャテル湖の夏

 夏らしい一日でした。
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寄り道で見つけた廃墟
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夏らしい雲
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湖畔で日光浴とは風流ですな
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Grandsonの城

フォーカスがずれてますね。振動のせいでしょうか。

共生の陰で

【調査捕鯨】実はモラトリアム解除を恐れている水産庁?【愚劣の極み】
http://himadesu.seesaa.net/article/102904846.html

蛇足ですがこの論文は、日本のような捕鯨推進国と、反捕鯨国やグリーンピースやシー・シェパードなどの反捕鯨団体との間に、ある種の共生関係が存在すると指摘しています。
たとえば「日本は調査捕鯨を継続するために商業捕鯨を再開させようとしない反捕鯨国を必要とし」、「反捕鯨団体も捕鯨団体を叩くことによって、会員からの寄付収入を確保している側面がある」というのです。


 上など読んで思いだしたのはオーストラリア政府がyoutubeで行ったトンチキな反捕鯨キャンペーン。捕鯨推進派の精神的支柱である「捕鯨は日本の伝統文化」「捕鯨は科学的」という俗説が虚構であることを説明すれば良かったものを、日本人に訴えかけるよりもオーストラリアの選挙民にアピールするような内容でした。

 鯨肉横領疑惑に関するGPのやり方にも私は納得がいきません。鯨研、船会社、水産庁の二転三転するしどろもどろの説明を見れば違法行為が横行していたのは明らかなのですが、結局うやむやにされてしまいました。この辺人によって捉え方に差がありますが、宅配便のインターセプトについて星川氏自身が「釈然とはしてない」とコメントしていますし、私も同感です。そして私が一番不満なのは一気にチェックメイト出来なかった点なのです。動かぬ証拠をそろえて一撃でしとめなければならなかったのに、初弾で致命傷を与えられず、手負いの獣に逆襲されたようなものだと思っています。

日本に好都合なのは調査捕鯨の継続 「捕鯨外交のまやかし」が指摘する不毛な論争の背景
http://www.news.janjan.jp/living/0802/0802120675/1.php

石井さんは、捕鯨派と反捕鯨派の関係を“逆予定調和”と呼んでいる。「はじめから予測できる対立が逆説的に共生関係を生んでいる」というわけだ。だから捕鯨問題はいつまでたっても解決へとは向かわない。


 まとめるとこうですか。

反捕鯨派:反捕鯨という環境保護パフォーマンスで寄付金を集めたり票を集めたりできる(「悪の捕鯨」が無くなると困る)。一方で普段はクジラに関心の無い日本人を反・反捕鯨で団結させるという利敵行為でもある。

捕鯨推進派:税金を投入した「調査」捕鯨でも収支は厳しいので、「商業捕鯨再開」をスローガンとしつつ感情的な外国の無理解のために商業捕鯨が再開できないということにしたい(商業捕鯨を認められても産業として成り立たない)。あと、もはや反捕鯨派がニュースを作らないと鯨肉に注目が集まらない(「ウネス」という言葉はあのニュースではじめて知った)。もっと現実に即した呼び方をするなら捕鯨推進派というより反・反捕鯨派が多数である。

 ある人にもらったコメントが実に的確であることに気がつきました。

なるほど、そういう非常に微妙なバランスもあり得るんですねぇ。

あ、あんたなんて大嫌いよ!
・・・で、でも、ほんとはいてくれないと困るんだからっ!

新手のツンデレですか?w


 ではこうしたツンデレの陰で科学者や科学はどうなっているのか。調査捕鯨の永続自体が目的なら調査目的は達成困難で時間がかかるほど好ましく、また達成できなくても全く構わないわけです。生態系モデル構築が云々という泥沼化は、商業捕鯨延期と調査捕鯨継続の口実づくりにうってつけではないでしょうか。大本営傘下の科学者が受けるメリットがあるとすれば雇用と予算の確保です。また反捕鯨派の科学者は調査捕鯨を批判すればネイチャーやサイエンスに載りやすかったり(批判のコメントだけなら業績とはカウントされないが)、反捕鯨団体から講演依頼など来たりするかもしれません。こういった状況に満足する人もいるのかもしれませんが、本当にクジラの生物学に興味のある人にとってはクリエイティブな環境ではなく、鯨類科学自体にとっても好ましい状況ではありません。

 政治的には「問題解決を模索するより、お互いいがみ合っている方が安定する」、一種の双利共生なわけですが、この状況は科学にとっては不幸なのですよ。

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泥沼の捕鯨

JARPAの成果たる学術文献の中にネイチャーに載ったものを発見。
http://www.icrwhale.org/03-A-a-08a.htm

Nagasaki, F. 1990. The Case for Scientific Whaling. Nature 334: 189-190.

とあるけど、正しくはNature 344。調査捕鯨の成果報告ではなく、Commentaryで調査捕鯨についての弁明です。小学生に「調査捕鯨の結果は科学誌の最高峰であるネイチャーやサイエンスに論文が掲載されたこともなければ、専門家に多く引用される論文があるわけでもなし。」と言わせたけど、訂正する必要はないと思います。

 で、これは1990年の時点で何を目的として調査捕鯨を行おうとしていたか、それをどのように対外的に説明していたかがわかる資料です。例えば南極海鯨類調査目的の一つ、年齢ごとの自然死亡率の推定は、この文献でも、2003年に発行された「クジラと日本人」(大隅清治著、岩波書店)でも言われています。90年のこの文献では予備調査の結果から"it will be easier to calculate natural mortality by age"と予想されています。また、1988年に捕獲した273頭のミンククジラについて、サンプルサイズが小さすぎて何ら明確な結論を得られないと断じ、将来の捕獲数増加を論じています。水産庁の資料からミンククジラの捕獲頭数を引用しておきます。
www.jfa.maff.go.jp/kokushi_hp/H16genkyou/H16syousai/46L.pdf
33-01Jarpa.jpg

そして20年近い調査の結果は以下のようなものだそうです。

GPの資料より
クジラは殺さなければ科学的な調査はできないか?
www.whalelove.org/raw/content/fun/1677143.pdf

1987/88年に始まった最初の「科学的」捕鯨プログラム、南極海鯨類捕獲調査(JARPA)は、自然致死率(自然死亡係数)などを解明するために18年を要し、6,788頭ものミンククジラを捕獲しました。しかし2006年に東京で開かれた調査結果を評価する科学者会合(日本人の科学者を含む)で至った結果は、「クジラの自然致死率は断定できない」という悲惨なものでした。JARPAによる自然致死率の推定データは信頼限界が広範囲に及ぶため、自然致死率が解明できないままどころか、未だに自然致死率=0という数値すら除外されていないのです。これは言い換えれば、致死的な方法を用いた18年間の「研究」で、ミンククジラは不死身だという可能性すら除外できなかったことになります。学会での報告書は「この研究目的に対して、比較的小規模の進歩が見られた」という表現にとどめています。
多額の税金と多くのクジラを犠牲にしたJARPAは、科学的価値のある調査結果が出せない大失敗に終わりました。それにもかかわらず鯨研は、調査課程の見直しもきちんと行わないまま、更に多くのクジラを捕殺する2つ目のプログラム、第?期南極海鯨類捕獲調査(JARPA ?)の開始に2005/06年度から踏み切ったのです。


GPだけではなんですのでより信頼性の高い文献も。拾い物なので全文を読んでいないのが残念ですが。
石井敦「調査捕鯨における「科学」の欠如は漁業資源交渉に悪影響を及ぼしかねない」『科学』2008年7月号

南極海調査捕鯨はその第一期(1987?2005年)が完了し、その成果を科学委員会が評価する会合(日本人研究者も多数参加)が2006年12月に東京でで開催された。南極海調査捕鯨の目的は三つに大きく分けられる、すなわち、南極海ミンククジラの自然死亡率(捕殺以外で死亡する割合; M)の推定、個体数増加率の推定、生態系における同鯨種の役割(同じくオキアミを食べるシロナガスクジラとの相互関係等)の解明である。評価会合の結論を一言で表せば、18年間の長期にわたり研究費が不足することなく、約6800頭ものミンククジラの標本が得られたにもかかわらず、いずれの目的も何一つ達成されなかった、というものである。


 (上の二つで言われている死亡率について、私は年齢別死亡率のことと解釈していますが。。)なんでこの目標が達成できなかったのか?私が気になったのはこの点です。そのへんの事情がまだよくわかりませんが、こんな文献がありました。
http://www.kaiyodai.ac.jp/Japanese/db/0010/0210/TH_40803814.html
On the estimation of age dependent natural mortality ( Sakuramoto K. and S. Tanaka ,1989)Rep. int. Whal. Commn ,39,371-373

国際捕鯨委員会科学委員会は1982年商業捕鯨の10年間禁止を決定し、鯨類資源の包括的評価を行って、上記決定を10年後に見直すとした。本研究は、日本が行った捕獲調査のデータをもとに南半球産ミンククジラの年齢別の自然死亡率を推定した場合の推定精度について、数理モデルを構築し、シミュレーション法により検討したものである。必要な捕獲頭数と推定精度の関係を計算した結果、捕獲調査による予定サンプル頭数825頭では、推定精度が極めて悪いことを明らかにした。桜本はデータ解析、シミュレーションを行った。


 千頭近く捕殺しても精度に難があるようです。(私はこれについて、1シーズンにとれるサンプル数が重要で、累積数では意味がないようだと素人解釈しています。それとも6000以上のサンプル数でも不充分なのでしょうか。(2014.7.8追記 現在では、死亡率の推定には年間千頭ほどの捕殺を数十年間続ける必要があるが、現在の捕鯨管理には死亡率データは不要、と私は理解しています。)1989年の段階で年齢別自然死亡率の高精度の算定はかなり難しいことがわかっていたわけですが、それにも関わらず目標として掲げたわけです。何か成算があったのでしょうか。数学モデルの改良で少ないサンプルでも精度を上げられるとか、充分なサンプル数を確保できるとか。そもそも誰がこれをやろうと言い出したのか。ここを見ると反捕鯨側の科学者がイジワルで無理難題をふっかけたようにも思えますが、だとしたらとんだやぶ蛇ですな。出来もしないことを延々と続ける方もなんですが。それとも調査捕鯨を永続化するのに都合のいい理屈を見つけてうれしかったんでしょうか。

 輪をかけて問題なのはこの失敗の総括が行われていないように見えることです。
http://www.icrwhale.org/03-A.htm にある
SC/57/O1 第二期南極海鯨類捕獲調査計画(JARPAII)?南極海生態系のモニタリングと鯨類資源の新たな管理目標の開発?
というpdf書類を読んでみますと第一期調査の要約として自然死亡率についてp.6にこのように記述されています。

また、クロミンククジラの自然死亡係数については、当初から予定されていた田中の方法(Tanaka, 1990)とADAPT-VPAによる解析が行われ、前者では0.05/年(Tanaka et al., 2005)、後者では0.05?0.08/年(Kitakado et al., 2005; Mori and Butterworth, 2005)と推定された。


 年齢依存的死亡率の変化については何もわからなかったわけですが、その失敗の要因とかについては論じられていません。全体的な死亡率についての記述にとどまっています。因に水産庁の資料によるクロミンククジラの解説はこのようになっています。
www.jfa.maff.go.jp/kokushi_hp/H17genkyou/H17syousai/49.pdf

本種の自然死亡係数は、かつては近縁種間の類推から0.086 (Ohsumi 1979)から0.088(Kato 1984)程度と一応の合意があったが、現在では年齢依存的に変化するものと考えられており、日本政府の許可発給の下に行われている南極海鯨類捕獲調査(JARPA)も、この年齢依存的自然死亡係数の推定を主目的の一つとしている。


 なんかあんまり変わり映えがしませんね。全体的な死亡率が激変することはないでしょうけど。JARPAIIの計画書は、前回の失敗については一切語らずひたすらバラ色というか玉虫色というかな文言を連ねる極めて官僚的なものとなっています。結局前回の調査では年齢別死亡率についてわからなかったのですが、第二期の調査計画ではこれについては何もふれられていません。商業捕鯨再開に必要なデータを集めることを名目とした調査捕鯨なのですが、必要な(?)データが得られなかったことを気にしているそぶりもありません。Natureでも一般向けの書籍でも公言していた調査目標を達成できなかったのですが、それを省みないあたりが非常に官僚的だと思います。漫☆画太郎先生の樹海少年ZOO1を思い出しますね。「1988-2006年の調査捕鯨はなかったことにして下さい」とか「調査目標の年齢別死亡率推定はなかったことにして下さい」とか。

 これを読んでもう頭の中がわけわからん状態になってしまいました。素人が手を出すもんじゃねーなー。ここはプロの意見を概観して満足しましょう。粕谷先生のお話サイエンスの記事で言われている通りなんじゃないかと。あと、水産資源学の専門家のブログを発見したのですが、ズバリ言い切ってくれています。

商業捕鯨再開への基本戦略
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/11/post_235.html

強硬路線にせよ、雪解け路線にせよ、最大の障害は調査捕鯨である。
日本が調査捕鯨利権にこだわる限り、時計の針は永久に止まったままだろう。
そもそも、商業捕鯨再開のための調査捕鯨だったはずであり、まさに本末転倒である。
日本は基本的な戦略を国際社会に対して明確にした上で、
商業捕鯨再開という大きな目的のために、調査捕鯨を中止する英断が必要だろう。


 捕鯨外交の目的はモラトリアム解除による商業捕鯨再開ではなく調査捕鯨の維持にあるという指摘は非国民通信や上の勝川さんがなさっており、また学術的には石井先生らが記述しているのですが、これと同様、大本営に調査捕鯨の目標を達成する意思が本当にあるのかも疑わしくなってくるんですが。商業捕鯨をやっているノルウェーが年齢別自然死亡率などのデータを得た上でやっているとも思えません。南極での商業捕鯨再開を阻止しようと反捕鯨派の科学者がふっかける無理難題がかえって調査捕鯨の口実になっているのでしょうか。

 もうわけわからんのですが、素人が見てわけわからん泥沼状態にすることも大本営の意図するところでしょうか。大本営にとって重要なのは調査捕鯨継続それ自体なので、調査目標を達成できるかどうかはどうでもいいんじゃないかと思えます。巻き込まれる科学者はたまったもんじゃありません。

 解決に最も良いのは日本が態度を変えることなのですが。勝川さんの言葉を借りると、

「もう公海で捕鯨なんてやんねーよ、バーカ、バーカ」


とIWCで公言することでしょう。

もし可能なら国際捕鯨取締条約第8条に、起草者の意思に沿う形で調査捕鯨捕獲枠の上限(年間10頭)を付け加えて欲しい、というのが私の個人的希望です。

第一回PEW鯨類シンポジウムでは石井先生が解決策に言及しています。

Among solutions, he cited: bringing scientific whaling under control of international law; diminishing the Japanese public's and politicians' support for scientific whaling; changing activist NGO strategies that offend the Japanese and fuel support for scientific whaling; and reconsidering a revised version of an earlier Irish proposal, which would allow coastal whaling in EEZs, promotes a global sanctuary elsewhere, revises the RMS, and abolishes scientific whaling.


このとおりなのでしょう。そうじゃないかな。

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名物にうまいものなし

クジラの科学は生物学? 資源学?
http://chikyu-to-umi.com/kkneko/sigen.htm

いま、世界の権威ある科学誌で、鯨研発の論文が掲載を拒否されています。日本の鯨類学は、科学の分野として三流の扱いを受けてしまっているのです。研究者にとってはまさに非常事態、屈辱以外の何物でもないでしょう。


はなしにならん
http://d.hatena.ne.jp/o-kojo2/20080402

今ではクジラを殺さずに多くの情報を得る方法がある。時代遅れの手法をもちいたうえに、ほとんど論文も発表せず、鯨に関する有用な情報をもたらさない科学的事業がありえるだろうか?


グリーンピース逮捕捜索は不当弾圧、税金での調査捕鯨に反対する
http://blog.livedoor.jp/rekcah/archives/812772.html

それから、鯨研のページ見ても、どこにも詳細な調査結果とか、それを元にした論文とか、そういう物がない
少なくとも私は見つけられなかった。すぐ見つかる分かり易い場所にはない


自滅した調査捕鯨
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080521/1211359006

ただでさえ、日本の調査捕鯨は“形を変えた商業捕鯨”と批判されている。この批判はもっともなもので、

・モラトリアム直後から開始し、毎年行い続けている(JARPAからはじまって、現在JAPRAII)

・年々、捕獲頭数が増えており、一般的野生動物調査の常識と異なる(現在はRMS算出値のほぼ半分に達する)

・なぜか、非致死性調査を行わない(他国による非致死性調査の結果は論文誌に掲載)

・調査といいながら、学術的調査がほとんど行われず科学的成果が無い(論文誌に結果が掲載されたことがない)


 私も昔、感情に任せてこんなのを書きました
F x x K!!!
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-9.html

「大変評価されている」とか「高く評価されている」とかのどうとでも言える抽象的な記述はよく目にしますが、鯨類研究所の出した学術論文は被引用件数からして惨憺たるものですね。そもそも探すのに苦労しましたよ。


 もっと金持ちの様に精神的余裕を持って解説するとこうか。

スネちゃま捕鯨を語る
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-15.html

実際には鯨類学者のほとんどは調査捕鯨の結果を高く評価はしていないよ。


 私が寄与しているとは思えませんが、各方面からの批難にこたえるためか(?)、鯨類研究所が業績一覧のページを作成したみたいです(と、書いたところでいままで業績一覧すらなかったことの異常さを改めて実感)。南極海でやってきた調査捕鯨の成果だそうです。
http://www.icrwhale.org/03-A-a-08a.htm

間髪入れずににkknekoさんが突っ込みを。
鯨研の論文ちょこっと点検
http://kkneko.sblo.jp/article/17021914.html

調査捕鯨で絶対わからない種間関係の生物学的重要性
http://kkneko.sblo.jp/article/16989845.html

 以下門外漢の私の感想など。2007年の結果についてですが、論文7報という数は時間のかかりそうな野生動物調査という分野にしてはかなりいい調子なのではないかと思います。クジラ関連の論文でよく名前を見かけるScott Bakerさんの2007年の業績(6報)をしのぐ数です。Bakerさんのところと鯨研とで人数や予算にどのくらい違いがあるのかはわかりませんが。
http://fw.oregonstate.edu/About%20Us/personnel/faculty/baker.htm

 kknekoさんもご指摘の通り、肝心要(?)ご自慢の(?)鯨研名物(?)「胃の内容物調査」「ミンクーシロナガス競合説」など、一般信者向けに喧伝されている研究内容についてははさっぱりですな。まぁこれらは疑似科学なので査読付きの科学雑誌に載らないのは当然ですが。

 ものすごく興味をもったのはこれ。

Onbe, K. Nishida, S., Sone, E., Kanda, N., Goto, M., Pastene, L.A., Tanabe, S. and Koike, H. 2007. Sequence Variation in the Tbx4 Gene in Marine Mammals.Zoological Science 24(5): 449-464.

 この話は進化発生学的に興味深いのですが、この論文はまだクジラからTbx4遺伝子を取り出しただけの段階なのでそれほどのインパクトはありません。
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 Tbx4は後肢の発生に関与しているので、今後、クジラを含む海獣類が進化の過程でどのように後ろ足を変化させた/無くしたかを分子生物学的に説明できれば非常に面白い研究になると思います(上の図はTanaka et al., Nature 2002より)。

 Tbx4標的配列の変異など興味深いところですが、モデル動物でどのくらい研究が進んでいるものなんでしょうか。断っとくとこの論文の第一著者も責任著者も九州大学の人なので、鯨研はサンプルを提供しただけと思われます。
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(上図BはTbx5遺伝子が前肢の発生を制御している様子を表したもの。Tbx5が制御する下流遺伝子の違いがヒトの腕とトリの翼の違いを産み出す。同様に、Tbx4遺伝子は後ろ脚の発生を制御するが、Tbx4の標的となる遺伝子の違いが各動物の後脚の形態の差異となる。ニワトリでTbx4を翼の部位に発現させると翼が部分的に脚に転換し、Tbx5を脚で発現させると同様に脚が部分的に翼に転換することが知られている(Takeuchi et al., Nature 1999)。ちなみに図A、昆虫の後翅形成に関わるUbx(Ultrabithorax)遺伝子はTbx(T-box)とは、DNAに結合して形態形成を制御する「親分遺伝子」という点は同様だが、略称が似ているだけの別物の遺伝子である。図はSean Carroll博士の授業用資料より。)

 ただどうしても、「クジラが進化の過程でどのような分子機構によりに後肢を失っていったのか」を調べるのにわざわざ南極のクジラを殺して材料にする必要があるか?という疑問がわきます。クジラに何か分子発生学的な実験操作をするのは容易いことではないので、マウスやニワトリなどモデル動物でTbx4の機能がどこまでわかっているかがまず重要です。クジラについては皮膚サンプルとか生体の一部があれば充分ですし、過去に捕殺したサンプルでも間に合います。ワトソン博士のゲノムが公開されていることからもわかる通り、この場合、クジラのゲノム情報を得るのに捕殺の必要はないのですよ。その他の論文タイトルにも目を通しましたが、一事が万事こんな具合で、わざわざ南極で大量のクジラを捕殺する必要性を感じさせる論文は見あたりません。

 総じて、真っ当な研究目的のために必要最低限のサンプルを捕獲しているのではなく、「大量にあるクジラの死体を使って何ができるか」という方針で研究が行われているのがみえみえなのです。これらの論文は大量捕殺のおまけとしても、IWCの方へ提出している本命の研究がろくに評価されていないのがさらに致命的なのですが。

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捕鯨についてのまとめ

 逮捕されたグリーンピースの人達は起訴されたようです。さて、今年にはいってはじめて真剣に捕鯨問題に取り組んだので過去記事には色々ぶれがありますが、現時点で私が調査捕鯨に反対する主な理由を整理してみます。

1)調査捕鯨の成果が一般的な科学者を納得させられるものではないこと
 スネちゃま捕鯨を語る
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-15.html
 満足ですか?
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-25.html

2)調査目的に対して大量捕殺という手段が適切でないということ
 去年のニュースより
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-28.html
 シートン俗物記:自滅する捕鯨 の軍団
 http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080122/1200991642

3)大本営が流布する「鯨食害論」や「ミンクーシロナガス競合説」が疑似科学であること
 …それはありえない
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-18.html
 青い裸の鳥の王様
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-20.html
 Lügner!
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-27.html

4)上記1?3に対して国内の専門家の言論が封殺されていること、すなわち政治による科学の腐敗であること
 Corruption
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-19.html
 ルイセンコは死なず
 http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-21.html

 以上の理由により調査捕鯨を中止するべきと考えています。税金で捕鯨をやることには私は反対しませんが、科学者に迷惑のかからないところでやってもらえませんかね。因に南極はサンクチュアリなので捕鯨禁止ですよ。専門知識の要らない信頼性の高い資料として以下のものを挙げておきます。

1)2)に関してはNature 435: 883-884 (2005)やScience 316: 532-534 (2007)が図書館などで手に入りやすいと思います。

3)については専門的な知識がなくても理解できますが、あえて挙げるなら、鯨類研究所捕鯨協会が配布するパンフレットと動物愛護団体IFAWのパンフレットを比較してみるのがよいでしょう。そもそも一方は科学というレベルではないんですが。

4)については
PEW鯨類シンポジウム速報 第1回 および 第2回

「なぜ調査捕鯨論争は繰り返されるのか」石井敦 世界(岩波書店)2008年3月号
参考:http://d.hatena.ne.jp/tomonee/20080208

An Alternative Explanation of Japan’s Whaling Diplomacy in the Post-Moratorium Era
Ishii & Okubo, Journal of International Wildlife Law and Policy 10:55-87 (2007)
「商業捕鯨モラトリアム以後における日本の捕鯨外交を新しい視点で読み解く」の日本語版要約(pdfファイル)

毎日新聞に掲載された粕谷先生のご意見

殺さずとも解明可能 「科学目的」に疑問??帝京科学大教授・粕谷俊雄氏

国際捕鯨取締条約は確かに、加盟国に調査捕鯨を認めている。しかし、調査捕鯨の続行には問題が多い。理由は大きく分けて3点ある。

1点目は、実験動物の扱いとして適切なのか、という問題だ。多くの学会では、実験動物に必要以上の苦痛を与えないよう自主規制している。同条約はクジラを水産資源と見ている。しかし、クジラは人類共有の財産であり、加盟国の私有物ではない。1946年の条約調印から60年たち、世界の常識的な動物観に合わなくなってきている。それでも科学のために捕鯨を続けると言うのであれば、研究者のエゴイズムでしかない。

2点目は、調査捕鯨は同条約が認める「科学目的」なのかという問題だ。調査捕鯨の年間経費は約60億円。このうち国の補助金などを除いた約50億円をクジラ肉の売上金でまかなっている。売上金がなければ捕鯨関連団体は維持できず、船舶会社も捕鯨船の建造費などを回収できなくなる。この枠組みは「経済行為」そのものであり、そこには研究者の主体性が反映される余地などない。決して、同条約が認める「科学目的」ではないのだ。

3点目は、調査捕鯨の手法は科学的に妥当なのかという点だ。日本鯨類研究所は「致死的調査でなければデータが取れない」と主張する。しかし、生体組織の一部を取り出すだけでも、脂肪の含有量や妊娠率は分かる。餌の内容は糞(ふん)を採取すればよい。

第2期調査の最大の目的は「生態系モデルの構築」だ。現在、海洋におけるクジラ類の役割を解析するための生態系モデルがないことから、モデルづくりの必要性は理解できる。耳あかから得られる年齢情報だけは殺さなければ手に入らないが、まずは商業捕鯨と第1期調査で蓄積した膨大なデータを使ってモデルをつくり、足りないデータがあった場合に限って、調査捕鯨で補うべきだ。

私は80年代に水産庁に在籍し、調査捕鯨計画の立案にかかわった。その際、我々に与えられた条件は「経費をまかなえる頭数を捕鯨でき、しかも短期では終わらない調査内容の策定」だった。今では、法の網をくぐるような調査捕鯨の発足に手を貸したのは、うかつだったと悔やんでいる。
(毎日新聞 2005年10月3日)


など。そもそも捕鯨について積極的に意思表示をしている国内の海洋生物学者ってそんなにいないと思うのですが。明らかに間違っているのに反対の声をあげられないんじゃないでしょうか。日本のやっていることが正しいと思うならその正しさを機会あるごとに主張するはずです。これこそが政治による科学の腐敗の証左であると考えます。

 調査捕鯨にこれだけ問題があるにもかかわらず捕鯨に関してはオール与党体制であり、政治家ってのはつくづく腐敗臭を好む生き物なのだと実感します。
http://www.e-kujira.or.jp/topic/coo/07/0509/index.html
http://polarisjcpmetal.blog78.fc2.com/blog-entry-450.html

 ある程度の解決策は粕谷先生もご提案なされています。
第59回 ヒトと動物の関係学会 月例会:『人間とクジラの多様なつきあい方』
http://www.hars.gr.jp/katudo-houkoku/59th%20getureikai/59thmonthly.htm

粕谷先生のクジラ類研究は40年以上。(財)日本捕鯨協会鯨類研究所や水産遠洋水産研究所で研究に従事した経験から、日本が実施している調査捕鯨に対する考えをお話しくださった。捕鯨の歴史、商業捕鯨禁止にいたる経緯、調査捕鯨の法的根拠と政府の思惑などを前提に、政府管轄の研究施設では研究者の倫理を守ることが難しくなること、そして政府の方針にとって不利になる研究成果は発表しづらくなることを指摘。その結果、捕鯨に対する一方的なプロパガンダがなされることになることは問題だというお話だった。
クジラ類の研究施設は水産庁の管轄をはずれることが必要だと思うが、莫大な研究費をどうやって確保すればよいのかについては、まだ明確な答えはない。いずれにしろ調査捕鯨はやめるべきだと思う。法規制の枠外にあり、かなりの頭数が捕獲されている沿岸捕鯨については、漁民の生活もあるし徐々に消滅する方向で考えるのがいいのではないかという結論だった。



こちらで言われているテーマに沿うことかと思いますのでリンクしてみます。
http://8910-1000.at.webry.info/200801/article_25.html

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廃墟の村

 3年前、パリへツーリングに行った帰りに道に迷ってたどり着いた廃村の写真です。写真は全て2005年に撮ったもので、残念ながら昨年からこの村への入り口は封鎖されています。現在は何かの工事が行われているようです。
地図
http://tinyurl.com/2ozd5v

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いただきます、その前に

 「水からの伝言」という、水が「ありがとう」という言葉に反応して綺麗な結晶を作ると唱える疑似科学本があります。有名な話で、すでに物理学者などが適切な批判を行っています。
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fs/md/class.html

そして、もっともっと大切なこととして、何が「よいことば」で何が「悪いことば」なのかを、水に判断してもらおうという考えは、まったくまちがっていると思います。


http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/mizuden_doutoku2.html

良し悪しの判断を結晶形に委ねてしまうことは、思考停止ではないでしょうか。良し悪しは自分の頭で考える(考えさせる)べきものだと思います。極端な話、好きなときに結晶が作れるようになれば、人間は善悪の判断を一切自分でしなくてもよくなってしまいそうです。それはまずいでしょう。

 ***(略)***

「ありがとう」はよくて、「ばかやろう」は悪いという安直な二分法でよいのでしょうか。誠意のこもらない「ありがとう」よりも愛情をこめた「ばかやろう」のほうがいい場合もあるはず。言葉はそれだけで切り出すべきではなく、「場面」と合わせて初めて意味を持つはずです。


 「水伝」の信者をネットで観察したことがありますが「よいことば」を意識的に多用しようとしており、かえって言葉の持つ意味や美しさが損なわれていると感じました。最近見たものの中に「水伝」の変種のようなものを感じるところがありました。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080609/307049/

捕鯨に限らず大切なことは「獲物に感謝」することであろう。


と言っていますが、このコラムの筆者には基本的な知識が絶望的に不足しています。他にもyoutubeなどで捕鯨問題に絡めて「いただきます」と日本人が犠牲となったものへ感謝していることを強調する論調も見受けられますが、いくら感謝しているつもりでも、無知の免罪符にはならないのではないかと思います。「水伝」で「ありがとう」という言葉の価値が下落したのと同様に。

これについては既にkknekoさんが突っ込み済みですが、ここでも検証します。

激増しているミンククジラの腹の中は,サンマ,スケソウダラ,スルメイカ,カタクチイワシで満杯だったという。なにしろ日本鯨類研究所の試算ではクジラが1年間に食べるエサの量は3億?5億t。世界の年間漁獲量でさえ1億tなのである。


 毎度のことでウンザリしますが、漁獲量とクジラの摂餌量を比較したところで競合関係がわかるわけではないんですよ。仮にも博士号つきの身なら専門家による文献(Kaschner et al., 2001; Kaschner, 2004; Kaschner et al., 2006; Myers & Worm, 2003; Worm et al., 2006; Yodzis, 2001)を参照するべきでしょう。そもそもクジラと人間の競合を否定する文献しか見当たらないのですが。

必然的に激減したシロナガスクジラの保護のためにミンククジラの捕獲を認めるといった考えも出てくるかもしれない。


 これまたウンザリする俗論。これを根拠薄弱と批判する文献(Clapham et al., 1999; Holt, 2007)はあっても、この説を証明する文献は存在しません。米国海洋大気圏局によるシロナガスクジラ回復プラン(Reeves et al., 1998)や加藤秀弘先生の話も参照するべきです。そもそも我々はシロナガスクジラについて「最大の食べられる動物」という以外に何を知っているのか?何頭のミンククジラを間引けばシロナガスクジラがどのくらい回復するのか?という疑問も持つべきでしょう。

過去,生存の目的以上にクジラを殺すことはなく,殺されたクジラに礼が尽くされていた。こうして人間とクジラの間にはつながりが存在することとなり,種が保存されていた。


 伝統的に鯨体は捨てるところなく利用されたと言われていますが、例えば、江戸時代はリサイクル体制が整っておりほとんどゴミが出なかったそうです。すなわち、クジラだけが余すところなく利用できる特別な存在なのではなく、当時の産業構造上(整備されたリサイクル体制と鯨体を陸に引き上げるという捕鯨法のため)、クジラも捨てるところがなかったのでしょう。20世紀以降の日本の近代捕鯨は当初、欧米と同じく鯨油を目的としていたと言われています。例えば1930年代末期の捕獲記録から、これらを食肉としたとすれば年間約10万トンの鯨肉の供給があったはずですが、当時の統計は日本国内でそれだけの鯨肉が消費されていたことを示しておらず、日本も欧米と同様鯨油採取後の鯨体を投棄していたと考えられます。

 また、戦後のオリンピック捕鯨では、ある砲手がこのような述懐をしていることから「日本人はクジラを無駄なく利用してきた」というのが現代ではもはや通用しない虚構であることがわかります。

「あのオリンピック捕鯨はやり過ぎたと思う。獲れて母船が処理できずに捨てたこともある。肉もいいところだけとってあとは海にすてたものだ。(昭和)30年代の前半までは南氷洋のどこへ行ってもクジラが群れていたが、後半になると鯨の数がめっきり減ってしまった。キャッチャー(捕鯨船のこと)で何日間走っても鯨に行き会わない。海水ばかりだった。」
(和歌山県太地町出身の砲手の話「捕鯨II」 山下渉登 法政大学出版)


 現在行われている調査捕鯨についても、内臓や骨など現在では商品価値のない/低い部分は投棄されていると考えられます。鯨油についてももはや需要はないため、現在クジラを捨てるところなく利用するのは経済的に非効率です。なお、環境保護団体グリーンピースによると、商品価値の低い鯨肉(雑肉)の投棄も行われているとの内部情報があるそうで。

クジラに限らず,食料となってくれた存在への感謝の気持ちこそが最も大切なことではないだろうか。


 ミンククジラに「魚泥棒」や「シロナガスクジラ回復のため」などと濡れ衣を着せて殺して食うのは正当化されるのでしょうか。単に捕まえて食うより悪質な気がするのですが。五十嵐大介の「魔女」はハンバーガーの中から「わたしたちをたべないで。」と訴えかけます(ジャンクフード好きの私にとっては耳の痛い限りですが)。「食料となってくれた存在への感謝の気持ちこそが最も大切」というのはどう転んでも正しいのですが、それをどこまで深く理解して考えているかが常に問われない限り、「いただきます」は陳腐化しつづけるのではないでしょうか。正解を知っているだけでは不十分で、常に正確な知識を求め、答えのない問いを発しなければならんのですよ(この場合、なまじ正解があるだけにタチが悪いとも考えられるが)。

それではよい食事を。Bon appetit!

参考
シートン俗物記:いのちの奪い方
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080528

参考文献
Baleen whales: conservation issues and the status of the most endangered populations
Clapham et al., Mammal Review 29: 37-62 (1999)

Whaling: Will the Phoenix rise again?
Holt, Marine Pollution Bulletin 54: 1081–1086 (2007)

Modeling and mapping trophic overlap between marine mammals and commercial fisheries in the North Atlantic
Kaschner et al., In: Fisheries impacts on North Atlantic ecosystems: catch, effort, and national/regional data sets 9: 35-45 (2001)

Modelling and Mapping Resource Overlap between Marine Mammals and Fisheries on a Global Scale
KASCHNER, Thesis (2004)

Mapping world-wide distributions of marine mammal species using a relative environmental suitability (RES) model
Kaschner et al., MARINE ECOLOGY PROGRESS SERIES 316: 285–310 (2006)

Rapid worldwide depletion of predatory fish communities
Myers & Worm, Nature 423: 280-283 (2003)

RECOVERY PLAN FOR THE BLUE WHALE (BALAENOPTERA MUSCULUS)
Reeves et al. (1998) http://www.nmfs.noaa.gov/pr/recovery/plans.htm

Impacts of biodiversity loss on ocean ecosystem services
Worm et al., Science 314: 787-790 (2006)

Must top predators be culled for the sake of fisheries?
Yodzis, Trends in Ecology and Evolution 16: 78-84 (2001) 

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去年のニュースより

去年のScienceのニュース記事に興味深いものがあったのでご紹介。
Killing Whales For Science?
A storm is brewing over plans to expand Japan’s scientific whaling program
Science 316: 532-534 (2007)

 調査捕鯨について専門家たちのコメントが色々紹介されています。
“We're asked to review Japan's proposals, to treat them as science when they are not. And that is objectionable.”
~Scott Baker

“The science and data are very poor,”
~Phillip Clapham

“It's outrageous to call this science; it's a complete charade,”
~Daniel Pauly

“The Japanese want to ask which breeding populations the whales belong to, if these are growing, and where do they feed,” “These are all questions which can be answered using nonlethal techniques including observation, satellite tracking, and genetic studies.”
~Nick Gales

 散々に叩かれる日本の調査捕鯨ですが、心強い味方が現れました。ノルウェーはオスロ大学のLars Walløe氏です。海洋生物学の専門家ではないようですが、贅沢は言ってられません。
“They are doing valid science,” “If whales are going to be hunted in a sustainable manner, then we need this kind of information. But, if we’re not going to kill any whales, then it could be argued we don’t need it.”

 水産資源学的にはそれなりに意味のあることをやっているみたいですね。ところで科学調査目的でそんなに大量のクジラを捕殺する必要性についてはどうなんでしょうか?

“Whether or not it is necessary for their study to take so many hundreds of whales every year for science, I cannot comment.”

 どう見ても必然性の無い捕殺です。本当にありがとうございました。ところでWalløeさんの大先輩(?)にあたる、初代IWC議長のBirger Bergersen氏(故人)は調査捕鯨についての規定である国際捕鯨取締条約第8条を起草したそうですが、Bergersen氏が調査捕鯨についてどのようなイメージを持っていたか、Walløeさん自身が語ってくれています。

“It's clear that in his mind he was thinking that the number of whales a country could take for science was less than 10; he didn't intend for hundreds to be killed for this purpose,” “He had in mind, for instance, the possibility of finding a new animal and thus needing to take some in order to describe them scientifically.”

 それなんてツノシマクジラ?Bergersen氏の嘆きが聞こえるようです。

An Alternative Explanation of Japan's Whaling Diplomacy in the Post-Moratorium Era
Ishii & Okubo, Journal of International Wildlife Law and Policy, 10:55-87 (2007)
日本語要旨(pdfファイル)より抜粋。

 国際捕鯨委員会(以下、IWC)の商業捕鯨モラトリアム決議(1982 年)に関し、商業捕鯨再開に向けて同決議を覆さなければならない国は日本のみである。日本は当初、ノルウェー、アイスランド、ロシアとともに同決議に異議を申し立てた後、1985年に異議を取り下げて、国際捕鯨取締条約第8 条を根拠に“(科学)調査捕鯨”に移行した(法的には、異議を取り下げていない国々は8 条の枠外で商業捕鯨を実施してかまわない)。ほとんどすべての既存研究や新聞報道は、日本の捕鯨外交の目的がモラトリアム解除による商業捕鯨再開の悲願達成であると信じて疑ってこなかった。


 つまり商業捕鯨がどうしてもやりたいんなら出来るんですね。実際、ノルウェーの行っている商業捕鯨はこのスタイル(モラトリアムへの異議申し立てに基づく)のようです。現実には日本の水産会社各社は商業捕鯨再開に乗り気でないみたいですが。何かの科学目的のために必要最低限の捕殺を行っているのではなく、もはや商業捕鯨は成り立たないにも関わらず利権維持のために国営捕鯨をしているのが明白なため、日本の「調査」捕鯨は科学者から嫌われているのです。目的と手段があべこべで、動機の不純さが我慢ならないわけですよ。商業捕鯨より大規模な調査捕鯨ってなんなんだよ。
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